人気のないカフェで待ち合わせた彼女に一通り説明するのにはすごく時間がかかった。
まず壱馬さんが殺し屋であること
僕もその仲間であること
ボスの存在がいて、僕たちみたいな人が結構な数いること
警察に追われていること…
壱馬さんは本当に何も彼女に伝えていなかったらしい
知ってるのは家と下の名前だけ
たったそれだけの情報で女の人1人落とした壱馬さんは相当なやり手だな。
それかこの彼女がただ簡単な女の子だっただけなのか
しかも驚いたことに壱馬さん、自分のことおーかみくんって呼ばせてるらしい
これには、こんな緊迫した状況でさえ流石に笑ってしまった
でもこんな風に話している間にだって、いつか捕まってしまう壱馬さんとの時間は短くなっていく
だから今日家に来てもらうことにした
潤む瞳。
そりゃそうだ
好きな人が人殺しで、今警察に追われてて
普通ならこんな話ありえないわけだし。
でも今日1日で壱馬さんがあなたさんに惚れる理由が少しだけわかった気がした
あなたさんは真っ直ぐなんだと思う
僕達とは違って。
なんて言うか、なんとなく
僕達と住む世界が違うからこそ憧れる
こういうとこだ。きっと壱馬さんが惚れたのって
駄目なのに、少しだけ
そう思った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!