第20話

優しい人
928
2021/05/06 10:29
人気のないカフェで待ち合わせた彼女に一通り説明するのにはすごく時間がかかった。

まず壱馬さんが殺し屋であること

僕もその仲間であること

ボスの存在がいて、僕たちみたいな人が結構な数いること

警察に追われていること…



壱馬さんは本当に何も彼女に伝えていなかったらしい

知ってるのは家と下の名前だけ

たったそれだけの情報で女の人1人落とした壱馬さんは相当なやり手だな。

それかこの彼女がただ簡単な女の子だっただけなのか

しかも驚いたことに壱馬さん、自分のことおーかみくんって呼ばせてるらしい

これには、こんな緊迫した状況でさえ流石に笑ってしまった

でもこんな風に話している間にだって、いつか捕まってしまう壱馬さんとの時間は短くなっていく

だから今日家に来てもらうことにした






あなた
本当に会えるんだよね
はい。もうすぐ着きますよ
あなた
…w
どうかしましたか?
あなた
なんか緊張するなって
あなた
だって殺人犯と会うんだから…
…そう、ですよね


潤む瞳。

そりゃそうだ

好きな人が人殺しで、今警察に追われてて

普通ならこんな話ありえないわけだし。

でも今日1日で壱馬さんがあなたさんに惚れる理由が少しだけわかった気がした

あなたさんは真っ直ぐなんだと思う

僕達とは違って。

なんて言うか、なんとなく

僕達と住む世界が違うからこそ憧れる


壱馬さんがそんな人でもまだ好きなんですか?
あなた
え?
あなた
まぁ。好きかな
あなた
今更離れられないっていうか…駄目だよね。こんなんじゃ
あなた
いいように使われてる女みたい…w
…そんな事ないと思います。すごいことだし
壱馬さんは幸せ者だなー
あなた
…ありがとう
え?僕何もしてないですけど
あなた
そんなことないよ。壱馬…君のこと本当に考えてくれてるからこうやって連絡くれたんでしょ?
あなた
私、人殺しってもっと冷徹なおかしい人だと思ってた
あなた
慎くんはきっと優しい人なんだろうなって今日だけですごくわかった
っ…






こういうとこだ。きっと壱馬さんが惚れたのって


駄目なのに、少しだけ




僕のものになればいいのに…
あなた
ん?何か言った?
いや、なんでもないです…w






そう思った

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