ー冨岡先生sideー
俺は何をしているんだ……。
俺はさっきした事について自分でも悩んでいた。せっかく理性を保っていたのに、これからどうなるんだろうか……。不安で仕方ない。
ということで俺は脳内会議を繰り広げていた。
理性は「生徒に手を出してはいけない。ダメだ!」
と言っている。採用だ。しかし本能は……。
本能のほうは「お前は学園に転任してからずっとあなたの事を好いているだろう。さっさと既成事実を作ってしまえ。」
とか言っている。やめてくれ、俺!
退職は勘弁して欲しい。
とまで考えて、会議は早々に終了。
しかし、良く考えればだいぶさっき意識してくれたんじゃないか?あっちが俺を好きになれば、事実は出来上がるので、法じゃ裁けないのでは……。
だが、これがバレれば教育委員会が動き出してしまう……。
しかも悪く考えれば引かれているかもしれないが……。
さっき応急処置と題して指先にキスしたとき血の味は鉄のような味だった。
まぁ、当然だが。
あんなのが好きなんて鬼は変わっている。
そう、みんな察しの通り俺は『前世』を覚えている。
理不尽に全てを奪われる『前世』は、とても辛かった。
鬼に喰われたり息を引き取ってしまった人々がここに運命的に集まっているのは本当に奇跡に近い。
平和に今世を過ごしている元鬼達を見ているとあれは全て夢だったんじゃないかと錯覚してしまう。
絆創膏を取り出しながら俺はキッチンにいるあなたの所へと向かった……。
続く
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。