そうやって言うあなたは勇気を出して言ってくれたのだろう。
彼女の顔は赤く紅潮していて、とても可愛らしい。
俺が後五年くらい遅く生まれていたらどれだけ良かったことか……。
残念ながら、『風評』というものがある限り、俺には恋愛は無理だ。
しかし、これまでずっと『済まないな!それは無理だ!』と、断ってきた告白だったが、この少女が不覚ながらも教師となってからずっと好きだったのだ。
これはどう対処すれば善いのか、かなり考えたものだ。
教師が生徒に手を出してはいけない。
最悪の場合捕まるし、解雇の恐れもある。
そういう恋愛はさっさと『諦める』ことが一番だ。だが……
『諦める』が一番いいと思っていたのに、あなたは、そんな俺に『好き』と言ってくれる。
そこで俺はいい案を思いつく。
『女子の防波堤にする代わりに付き合う』という言い訳だ。
我ながら最低すぎる。
こんな歳になって、そんな幼稚なことを言うのは馬鹿げている。
それくらいは自覚している……。
しかしそうすれば、女子は寄ってこないし、あなたと付き合える。一石二鳥である。
つまりメリットだらけではあった。
他の教師からも、
俺の事を『女子を侍らせている変態教師』と考えられたら元も子もないからな。
そうなると、流石にあなたが可哀想だ。
俺も本当に想っているとはいえ、本人に『防波堤』宣言してしまっているので、意識されてないと苦悩することだろう。
どうすれば、本当のことを伝えられるのだろうか……?
続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!