私は帰り道、1人公園にいた。
今は夏真っ盛りでとても暑い。
現在の時刻は夕方くらいなんだけど、セミがまだすごい勢いで鳴いていて、さらに暑さが際立っている。
近所の公園のブランコに座り、
と言いながらブランコを真剣にこいで涼もうと考えたけど風すら来ない。
何故にここにいるのかというと、今日は両親がどちらとも仕事が入っていて、いつもなら鍵を渡してくれるのだが、今日は私が寝坊したために鍵を貰っていなかった。
つまり家に帰れないという状況である。
両親からもLINEなどは来ないし、すっかり預けたものだと思われているらしく、連絡も来ない。
とため息をつき、正面を見てみると予想外の人物が立っていた。
と話しかけてきたのは冨岡先生だった。
足音も立てないで静かに来るなんて、さすが体育教師だ。
と聞いてみると
という返事が返ってきた。
今日は居残りが少なかったらしく、冨岡先生は早めに帰っていたのだとか。
と冨岡先生は尋ねてきた。
こんなことを無表情で言える冨岡先生はすごいと思う。
というか家出ではないんだけどね……。
私はとりあえず事情を説明した。
と冨岡先生は電話してくれようとしているけど、私はそれを引き止めた。
冨岡先生は混乱しているようだ。
「帰りたいのに何故止めるんだ?」とでも考えているのだろう。
私はさらに事情を説明する。
そう。私の両親はいわゆる社畜であり、電話はほとんど通じない。
携帯を持たされているとはいえ、通じないのでは意味が無い。
冨岡先生は考えこんで私にこんなことを提案してくれる。
と聞いてみると、冨岡先生は
何故か『教師として』を強調されたのはなんでだろう……?
と本音を言うと、冨岡先生はぶっきらぼうに
と言ってくれた。
本当に優しいなぁ、冨岡先生。
そんな感じで冨岡先生宅にお邪魔させて頂くことになった。
続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!