靴箱に行き、上履きをローファーに履き替え外へと向かうと一足先に無一郎君は待っていた。
さっき自分でしたこと忘れたの?
恥ずかしくないの!?
と思うくらい無一郎君は平然としていた。
こっちはすごい恥ずかしいのにっ……!
『あのこと』ってなんだろう?
まぁ、気にしたら負けかな?
あと普通に優しい……けどさっきのことは忘れてないよっ!!
そんなことを言いながら無一郎君は歩き出した。
私が逃げないように手を繋いでくる。
健気だけど中等部女子高等部女子どちらからも羨望の眼差しが突き刺さって痛い。
とりあえず一緒に帰っていると、ニュース番組の記者のような人がこちらへ来て
記者とか目の前で初めて見た!
うちの学園は色々な活動をするから取材されてるところはよく見るけど、真ん前で見たことは無かったからびっくりした。
そっか、無一郎君は有名人だからなぁ。
こんな子に好かれてて私は大丈夫なんだろうか……?
しかも記者の質問で動じずに話す姿は私の年下とは思えないほど手馴れているように見える。
でも、次の質問で無一郎君は口を止めた。
これに無一郎君はどう答えるのだろうか。
無一郎君は一瞬で動揺を沈め、
そう言いきった。
私の顔はさぞ真っ赤なことだろう。
でも、これ東京のニュース番組?
それとも全国の大手ニュース番組?
大手じゃありませんように……。
と考えて二人で家に帰った。
(やけに私流されてるよね……)
続く
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!