女の子と話す機会は多くても、実を言うとデートの経験はあまりない。
どうしても、と言う客以外とどこかに出かけたことがないから。
彼女もできたことなんてないし、誰かを好きになったことすらない俺にとっては、当たり前のことなんだけど。
でも、
あなたの下の名前ちゃんとのデートは、間違いなく、今までの誰とするデートより楽しかった。
育ちの良さそうな彼女は、水槽の中を優雅に泳ぐ様々な魚たちを、目を輝かせて見つめていた。
本当に楽しそうで、心からの笑顔を俺に見せる。
ホストらしくないな、
俺。
こんなことで、きゅんとしてしまうなんて。
いや、これは恋じゃない。
ただ、あまり会ったことのないような純粋な子が新鮮なだけで。
そう自分を説得して、気まずくならないよう、あなたの下の名前ちゃんに話題を振る。
彼女は、俺の言葉一つ一つをしっかり聞いてくれて、楽しそうに相槌を打ってくれる。
楽しそうに目を輝かせ、俺に笑いかけてくる。
俺がそう言うと、
驚いたようにそう言うあなたの下の名前ちゃん。
俺も思わず聞き返してしまう。
あぁ、なるほど、
純粋すぎるこの子にとってこれは、デートではなかったんだ。
なんだ、俺だけか。
デートだなんて思っていたのは。
聞くと、
この子は、どこまでも純粋なんだ、きっと。
そう感じると共に、意地悪をしたくなる。
「俺と付き合いたいってこと?」
案の定、あなたの下の名前ちゃんは目を見開いて驚いている。
俺は、少し後悔する。
意地悪しすぎたか、
それに、自意識過剰なやつだと思われたかもしれない、
固まって口を開かないあなたの下の名前ちゃんに、俺はだんだんと不安になる。
俺のこと好きなんじゃなかったの、?
あからさまに態度俺に惚れてたし、毎日会いに来てたし。
絶対好きじゃん、俺のこと。
なのに、なんで付き合いたくないわけ、?
俺はまた、意地悪をしてみた。
するとあなたの下の名前ちゃんは慌てて言う。
好きですもん。
そう、続くと思った。
なんだ、やっぱ好きなんじゃん、。
そう思うはずだったが、
丁度のタイミングで、あなたの下の名前ちゃんのバックから携帯が鳴る。
そう言って取り出したスマホには、
「渚羽」
…っ、
いや、女友達かもしれない。
スマホの奥から聞こえる声は、
低くて、ゆったりとした、
あなたの下の名前ちゃんより少し年上くらいの男の声。
少しだけ、会話が聞こえる。
「-----、あなたの下の名前、----。」
呼び捨て、?
俺の頭に、とある言葉がよぎる。
彼氏…、
その後、あなたの下の名前ちゃんに電話の相手を聞いたが、はぐらかされて教えてもらえなかった。
ずっとずっと、俺のことが好きだとばかり思っていた。
でも、
なんだ、笑
彼氏、いたのかよ。笑
こうゆうことには、慣れているはずなのに。
夜の街は、嘘で溢れかえっているはずなのに、
どうして、
こんなにもモヤモヤするんだろう、
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!