不破さんが私にお財布を届けに来てくれた日から、2週間ほど経った。
あの後お兄ちゃんには、
「あいつ彼氏だろ。」
「ちゃんと稼げてる?
あなたの下の名前のこと養えるくらい金あんの?」
「結婚いつなんだよ。」
なんて、的外れな質問ばかり。
だから、
そもそも付き合ってないし。
あっちは私のこと好きじゃないんだってば。
そう、お兄ちゃんに言う度に、
そっか、不破さんは私のこと、好きじゃないんだもんね、笑笑
って、1人で勝手に落ち込む。
しばらく会ってないなぁ。
寂しい、な…
半ば強引にお兄ちゃんに背中を押され、私は自分のマンションの一室から出される。
もう、後戻りは出来そうにない。
うん、行かなきゃ。
私は、走り出していた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!