そう呟き、木に寄りかかって座る。
結局一睡も出来ないまま日は昇った。
すると部屋に兄が押し入って来て、ジャージを手渡された。
その後はジャージを着て外に行き、他の術式を創始創作術式で習得出来るか試してみた。
最初は禪院家の相伝術式、十種影法術からだ。
伏黒君に玉犬を出すところを見せてもらう。
少々手こずったが、割と"想像"は簡単ですぐに消えてしまったものの、玉犬を出す事に成功した。
その後はひたすら反復練習。
兄の隙を伺っていたが、やはりそう上手くはいかない。
そして今に至る。兄は任務ということで出かけてしまい、その間に休む事にした。流石にオールはキツい。
すると複数の足音が聞こえてきた。
…やめろ、休ませてくれ。近づくな。そのまま通り過ぎろ。
だがその願いも虚しく、足音は私の目の前で止まった。
仕方なく目を開ける。
ならば真っ先に気になるのはパンダだ。
パンダに視線をやると、ニコリと笑って言った。
自己紹介をパンダで済まされた。何も納得いかないんだが。
けれど追求する気にはならなかった。
次はおにぎりの具で話す男の子だ。
……さっきから知りたい事が何も説明されてない。
ていうか何でパンダは何言ってるのか分かるの?いや、それ以前になぜ喋れる??
禪院って……あぁ。
聞いたことある。確か双子のどちらかが呪いも見えないとか。
気になりはするが、まあ他人の事情にはズケズケと立ち入らない方が良い。
私だってされたくない。
みんなは楽しそうに話しながら行ってしまった。
その姿がマイキー達に重なる。
目を閉じて天を仰いだが、目から溢れた雫は頬を伝った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。