前の話
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兄はそう言うと私達に近づいて来る。
マイキーは抱きしめている腕の力を強めた。
私も思わずマイキーの背後に隠れる。
兄が指さしたのは私の腕に着けられた腕輪。
一瞬戸惑ったが、私は素直に腕を差し出した。
名前を呼ばれて肩が跳ねる。
私が顔を上げると、兄は着けている目隠しを取り、私を見つめて言った。
そう言うと兄は長いまつ毛を伏せた。
自分と同じ髪色、自分と同じ"五条"で、殺 そうと思ったほど憎い私の兄。
けど。
兄は目を開けてポカンとした。
兄さんの目をしっかり見て、未だ驚いた表情を浮かべている兄さんに言った。
"過去"の兄さんが憎かっただけで、"今"の兄さんはそうじゃない。
たった今そう思った。
やり方がやり方だが、兄さんは家のためではなく、私のために私を強くしてくれた。
家の人間が家のためでなく、私のために何かしてくれたのは、兄さんが初めてだ。
初めて家族が…私を想ってくれた。
それが嬉しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。