そうこうしていると、後ろから兄の声が聞こえてきて振り返る。
目に映った物に、思わず口の動きが止まった。
兄が持ってきたのは青いペイントのバブ。それを両手で押しながら持って来た。
マイキーは受け取ると、特攻服を肩にかけ直した。
兄さんはバイクスタンドを立ててバイクを停めると、私を見つめて言った。
マヌケな声が出る。念の為、もう一度聞き返した。
兄は私の反応が気になるのか、少しワクワクしているようだった。
兄に背中を押されてバイクに近づく。
一度目の前で止まると、その車体をマジマジと見つめた。
マイキーと色違いのバブ。しかも新品でメチャクチャ綺麗。
兄に急かされてバブにまたがり、ハンドルをにぎってみた。
コレで街中をマイキー達と並んで…!
マイキーやドラケンの後ろじゃない、隣でみんなと走れる。
考えただけで素敵な事だった。
バブから顔を上げて兄さんを見る。
そう言うと兄はいきなりスマホを取り出して、私とバブを撮り始めた。
「大丈夫、大丈夫〜!」と言いながら聞く耳を持たない兄は放っておくことにした。構ったってムダだ。
そんな事より今夜すぐにみんなと乗って…!
そしてふと思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!