第13話

純弥とまろやかエスプレッソ
最後に開いたのは、純弥さんからのメッセージ。


【慧斗に先を越された。
俺は、もう少しじっくり時間をかけてから言いたかったんだけど……。この際開き直る。
いい歳した大人が困らせて悪いとは思うけれど、真剣だから。
柑奈ちゃんに、それだけは分かってほしい】


とても彼らしい、熱のある内容だ。


純弥さんは、外見こそパリピ系の人かと勘違いされるけれど、実態は面倒見のいい体育会系のお兄さんというイメージ。


私自身も、彼からは妹のように接してもらっていると感じていた。



***



純弥さんがミラージュの専属バリスタとして、主に併設カフェの運営を行うと店長に紹介された時。


それが、私が初めて純弥さんに会った日だった。


店長とは対照的に、華やかでキラキラした人だなというのが、第一印象で。


ほんの少し、その腕を疑う気持ちもあったけれど、店長が引き抜いてきたくらいだからと、誰も何も言わなかった。


その後の休憩中、純弥さんが入れたエスプレッソを飲んだ時に、疑いはすっかりなくなる。
伊豆 純弥
伊豆 純弥
どう? これでも海外を渡り歩いて修行してきたんだ
久留 柑奈
久留 柑奈
す、すごく飲みやすくて美味しいです!
もう、他のコーヒー飲めないかも……

まろやかで飲みやすく、ほどよい苦みと酸味がスイーツにぴったりだと思ったのだ。


店長が、純弥さん以外のバリスタは考えられないと判断した理由が、よく分かった。


初めてミラージュのケーキを食べた日を思い出すほどの、衝撃。


それを伝えると、純弥さんは歯を見せて笑っていた。
伊豆 純弥
伊豆 純弥
ははっ。
君、面白いね。
名前は?
久留 柑奈
久留 柑奈
久留柑奈です
伊豆 純弥
伊豆 純弥
柑奈ちゃんか。
俺のことは純弥って呼んで

差し出された手を、おずおずと握りしめる。
久留 柑奈
久留 柑奈
(距離の縮め方が、さすがインターナショナルだなぁ……というより、個性?)

店長の方が海外居住歴は長いと聞くし、純弥さんは日本のスラングや流行にも割と詳しい。


接客もスマートで、外国人のお客さんにも外国語で対応できるし、困っているお客さんには自ら声を掛けに行く。


店長が作るスイーツに合わせて、日々テイストの合うコーヒーや紅茶を準備したり、開発したりという適応能力も高い。


普段から周囲への気配りを忘れないし、頼れる存在で、私も尊敬している。


そんな純弥さんが、外見じゃなく自分を見てくれたからという理由で、私を好きになったと言った。
久留 柑奈
久留 柑奈
(でも、純弥さん目当てで通ってる常連さんにも、そういう人はいっぱいいると思うんだけどなぁ)

私には大した魅力はないし、過大評価ではないのか。


悩ましくて、返事をどうすべきか考えると、溜め息が漏れた。


【第14話へつづく】