第6話

ライバルスイーツと元カノ疑惑

私の意見も参考にしながら、純弥さんが最終的に決めた茶葉を、数点購入した。


それらを、まずは週末限定でミラージュのカフェに取り入れてみることになった。
久留 柑奈
久留 柑奈
お客さんの反応、楽しみですね
伊豆 純弥
伊豆 純弥
だな。
まさか、カンヤムを仕入れる許可が下りるとは。
柊伍は理解があって助かる

純弥さんは元々甘いものが苦手だったのに、店長の作ったスイーツは、最初からなぜか食べられたらしい。


それをきっかけにして、ふたりは仲良くなったのだとか。


職人気質のふたりだからこそ、相性が良かったのかもしれない。



***



予定の最後は、ミラージュの近くにオープンしたばかりのパティスリー【ブランシュ・ネージュ】へ。
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
ブランシュ・ネージュ……。
【白雪姫】か。
女性のセンスっぽいネーミングだね
久留 柑奈
久留 柑奈
お店の外装もかわいいですもんね
スタッフ
スタッフ
いらっしゃいませ

店内は、ミラージュと同じくイートインスペースとカフェがある。


スイーツとドリンクの価格帯は手頃で、女性客を中心に賑わっている。
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
完全に、うちと競合しようとしてませんか?
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
ううーん、確かに……。
しかもこのケーキとか、見覚えが……

慧斗くんの言うとおり、ミラージュを参考にしただろうなという造りに、店長も難しい顔をする。
伊豆 純弥
伊豆 純弥
まあ、負けないけどな。
柊伍のスイーツも、俺が出すコーヒーと紅茶も
久留 柑奈
久留 柑奈
はい。
純弥さん、その意気です!
伊豆 純弥
伊豆 純弥
おう!

アフタヌーンティーを終えたばかりでお腹が膨らんでいるからと、店内では食べずに、いくつか購入して持ち帰ることになった。
久留 柑奈
久留 柑奈
(値段は確かにミラージュの方が高いけれど、見た目のかわいらしさや質はやっぱり段違いだ)

カフェのドリンクの種類も、それほど多くないし、純弥さんほどこだわっているとは思えない。


そう思っていると、ガラスケースの奥に、美人のパティシエールが見えた。


焼き菓子の補充をして、ふと私たちの方を見ると、店長に笑いかける。
パティシエール
パティシエール
柊伍、久しぶり。
偵察に来たの?
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
あっ……!
やっぱりここ、君の店だったんだ……
パティシエール
パティシエール
そう。
また、よろしくね

店長は苦笑いを浮かべ、狼狽うろたえたかのように目を左右に動かしている。
伊豆 純弥
伊豆 純弥
柊伍、知り合い?
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
うん。
専門学校時代の……。
びっくりした

昔の知り合いがライバル店と知って戸惑ったという割には、店長の反応がぎこちない。
久留 柑奈
久留 柑奈
(うーん?)

首を傾げていると、純弥さんが私の肩をとんとんと指で叩いた。
伊豆 純弥
伊豆 純弥
あれは多分、昔付き合ってたな
久留 柑奈
久留 柑奈
あっ……なるほど

耳打ちされて、気付く。


憶測でしかないけれど、きっと当時は、美男美女の華のあるカップルだったろうなと思う。
久留 柑奈
久留 柑奈
(もしも今、私をこっぴどく振った元カレに会うことがあれば、私もうまく話せないだろうな……)

誰しも、踏み込んでほしくないことはあるだろう。


店長が彼女と付き合っていたとも、限らないわけで。


このことは早く忘れてしまおうと、真相は聞かないことにした。


【第7話へつづく】