第4話

恋愛遍歴は、やっぱり甘い!?
久留 柑奈
久留 柑奈
そ、そういえば、さっきの映画に美味しそうなスイーツがたくさん出てましたね!

店長が頬を赤くしているので、とにかく話題を逸らすことにした。


彼らの雰囲気がすぐにがらりと変わって、真剣に見ていたのだと分かる。
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
世界的に有名なパティシエが監修についてたみたい。
正確な味までは分からないけれど、見た目の芸術的センスは勉強になったな……
久留 柑奈
久留 柑奈
そうなんですね!
本当に、あんなスイーツがあるなら食べてみたいです……
伊豆 純弥
伊豆 純弥
柑奈ちゃんは本当に甘いものが好きなんだな。
そういう方面の仕事を目指したい、とは思わなかったの?

純弥さんに聞かれて、私は首を横に振った。


幼い頃は、それこそ「ケーキ屋さんになりたい」なんて憧れていたものだけれど。
久留 柑奈
久留 柑奈
自分で美味しいものが作れたら、無限に作って食べちゃいますから。
今でさえ太らないように、ランニングを毎朝の日課にしてるのに……。
だから、スイーツの魅力を発信できるとか、そういう種類の仕事に就けたら嬉しいと思ってます
伊豆 純弥
伊豆 純弥
ははっ!
柑奈ちゃんらしいな

店長も慧斗くんも、ぷっと吹き出して、みんなで笑い出す。
久留 柑奈
久留 柑奈
(楽しいなぁ……)

お弁当も半分くらいがみんなの胃の中へ消えた頃、純弥さんが「聞きたいことがあるんだけど……」と、口を開いた。
久留 柑奈
久留 柑奈
はい?
伊豆 純弥
伊豆 純弥
柑奈ちゃんってさ、大学で好きなやつとかいないの?
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
ごふっ……
久留 柑奈
久留 柑奈
えっ、慧斗くん、大丈夫!?
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
……だいじょう、ぶ。
ごほっ……

慧斗くんがお茶を飲みながら咽せて、店長がハンカチを渡してあげた。


落ち着いたところで、私は純弥さんの質問を思い出す。
久留 柑奈
久留 柑奈
あ、えっと、好きな人ならいませんけど……。
どうしてまた?
伊豆 純弥
伊豆 純弥
いや、俺らは柑奈ちゃんの大学生活には接点がないからさ。
恋愛してるのかなーと思ってさ
久留 柑奈
久留 柑奈
ああ、全然です。
高校の時の彼氏に振られちゃってからは、あんまり恋愛したいとも思わないですね
伊豆 純弥
伊豆 純弥
えっ、柑奈ちゃんが振られたの?

今と同様、高校時代も甘いものが好きだった私は、ストレスが溜まるとすぐにお菓子に手を出していた。


そのせいで太りすぎてしまい、当時付き合っていた彼氏に「ないわー」と言われて振られてしまったのだ。


それ以来ダイエットをして、一週間のうちに食べる量を計算して、適度な運動をすることを心がけている。


そんな経緯を話すと、三人とも安堵したような、ちょっと悔しそうな、不思議な表情を浮かべていた。
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
彼女の外見だけしか見ていないなんて、馬鹿なやつ
久留 柑奈
久留 柑奈
慧斗くん……

慧斗くんと同じ学校に通う女子学生のお客さんから、「飴谷くんって、すごくモテるんですよ!」と聞いたことがある。


ただ、本人はお菓子作りにストイックで、浮いた噂が一切ないらしい。
久留 柑奈
久留 柑奈
(なんか、説得力があるな……。この人、と決めたら一直線なのかも)

店長と純弥さんも、彼らを目当てに店に通う女性もいるくらいだし、恋愛経験は豊富そうだ。
伊豆 純弥
伊豆 純弥
慧斗の言うとおりだな。
俺だったら、ふたりで一緒にダイエットするけど
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
うん、僕も。
本当に好きなら、ずっと一緒にいる

頷くふたりの言葉にも、胸がじんわりと温かくなる。


もう元カレのことは引きずってはいないけれど、振られて正解だったのだと思わせてくれた。
久留 柑奈
久留 柑奈
えへへ……。
ありがとうございます!
ちなみに、皆さんには彼女さんとか、いるんですか?

せっかくの恋愛話なのだから、聞いておいても損はしないだろう。


けれど、質問した途端、場がシーンと静かになった。
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
……オレはいない
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
僕も、海外生活が長かったから。
日本では女性の友人もいないくらいで……
伊豆 純弥
伊豆 純弥
俺もいないよ
久留 柑奈
久留 柑奈
えっ!?

三人とも、今はフリーだと言う。
久留 柑奈
久留 柑奈
(慧斗くんは分かるとしても……店長も純弥さんも!?)

きっと理想が高いのだろうな、と妙に納得してしまう。
久留 柑奈
久留 柑奈
店長は、ブロンドヘアーの彼女さんとか、似合いそうです……
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
えっ、そんな風に見える?
久留 柑奈
久留 柑奈
店長だけじゃなくて、皆さん、すごくモテますよね!?
今までどんな恋愛をしてきたのか、聞きたいです

私がお願いすると、三人ともすすっと視線を逸らした。
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
ごめんね、ノーコメントで……
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
オレも、言いたくない……
伊豆 純弥
伊豆 純弥
ははっ。
ということで、俺もそれは秘密にしておこうかな
久留 柑奈
久留 柑奈
えー!


【第5話へつづく】