閉店後。
改めて、スタッフ全員に謝ると、みんな快く許してくれた上に、温かい言葉までくれた。
早番のスタッフは先に退勤して、いつも通り、私は閉店業務に取りかかる。
モップで床掃除をしていると、純弥さんが近づいてきた。
あまり思い出したくないことだったけれど、今になっては笑い話だ。
純弥さんも苦笑した。
今日の出来事があったからこそ、私は自分の気持ちを確かめることができた。
その夜、私はいくつかの材料とスイーツ作りの本を買って、帰宅した。
バレンタインデーにチョコレートのお菓子を渡すべく、まずはテンパリングから練習を始める。
***
バレンタインデー、当日。
一週間続いたバレンタインフェアも、今日で終わりだ。
大学の講義が終わって、一度自宅にラッピング袋を取りに行き、それを店の冷暗所に隠した。
当日販売分のガトーオペラを目的に、お客さんは口コミを通して増え続け、しまいには店の外に行列を作った。
スイーツを受け取ったお客さんたちは、誰もが幸せそうで。
そんな慌ただしい時間が過ぎ、当日分の限定スイーツは早々と完売した。
ガラスケース内のスイーツも完売が相次ぎ、通常の閉店時間よりも早く全ての商品がなくなった。
もしかすると、クリスマス以上に反響があったかもしれない。
カフェだけを目当てに来るお客さんは、今日ばかりは少ない。
早めに閉店して、反省会をすることになった。
店長の言葉に、拍手が起こる。
バレンタインフェアは大成功に終わった。
***
片付けも済ませ、スタッフ全員が解散となった後。
〝彼〟だけは、店の外でそわそわと落ち着かない様子。
私が事前に呼び止めているからだ。
震える手にラッピングした袋を抱え、私は彼の元へと向かった。
【あなたが選んだ〝彼〟は……?】
・柊伍→18話へ
・慧斗→19話へ
・純弥→20話へ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。