第12話

慧斗と和洋折衷シュークリーム
慧斗くんからのメッセージは――。


【柑奈のことだから、『あれは夢だったのでは?』とか言い出しそうだったから、送っておく。
夢じゃないからな】


という、念押しの内容。
久留 柑奈
久留 柑奈
明察めいさつ……。
よく分かってるなあ

感嘆の声が出る。


慧斗くんはパティシエになるための勉強にストイックなイメージで、普段も口数は少ない。


彼からの告白に、実は一番驚いている。


慧斗くんに出会ったのは、ミラージュでの採用が決まって、研修初日の顔合わせの時。


学生やフリーター、主婦など、それぞれが自己紹介をする中で、慧斗くんだけは強く印象に残った。
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
飴谷慧斗、二十歳です。
実家は和菓子屋ですが、オレは四人兄弟の末っ子で。
家業は長兄が継いでくれるので、オレ自身は、和を取り入れた洋菓子を作れるパティシエを目指しています
久留 柑奈
久留 柑奈
(へえ……。同い年なのに、ちゃんと夢があってすごいなあ)

洋菓子技術の専門学校に通いながら、アルバイトでも勉強を重ねる姿に、私は畏敬の念を抱く。


研修初期の頃は、私が笑いかけても、そっぽを向いてどこかに去ってしまうことが多かった。
久留 柑奈
久留 柑奈
(あの時は、恥ずかしがってたってことなのかな?)

めげずに私の方から慧斗くんに話しかけることを重ねて、少しずつ慣れてくれた印象だ。


店長が、抹茶やきな粉を使ったスイーツを開発している時は、慧斗くんも意見を述べていた。


閉店後も、ふたり並んで意見を出し合う姿は師弟のように見えて、私もふたりの未来を心から応援している。
久留 柑奈
久留 柑奈
あっ!
もしかして、あのお菓子……

慧斗くんは、学校の実習で作ったというスイーツを、みんなには内緒で、私だけにお裾分けしてくれることがある。
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
柑奈、これ実習で作ったやつ
久留 柑奈
久留 柑奈
え? またもらっていいの?
飴谷 慧斗
飴谷 慧斗
……うん。
代わりに、食べた感想を教えてほしい
久留 柑奈
久留 柑奈
ありがとう!
あ、この前の、シュークリームに和栗とクリームチーズが入ってたのも、美味しかったよ!
珍しい組み合わせなのに、ちゃんとかみ合うものなんだねぇ
栗栖 柊伍
栗栖 柊伍
ふっ……うん

てっきり、甘いものが好きな私にだけ、厚意で分けてくれていると思っていた。
久留 柑奈
久留 柑奈
(ああぁぁぁ……そうかぁ……)

あれは厚意だけじゃなくて、彼なりの〝好意〟のアピールだったのかもしれない。


ようやく気付いた瞬間、申し訳なさと照れくささが同時にこみ上げてきた。


【第13話へつづく】