-プロローグ-
"先生…付き合ってください"
その一言が言えない臆病な私。
でも、
そばに置いてくれたなら
寂しい想いなんてさせないのに…
きっと最後までさせないのに…
"先生のことが大好き"だから。
…
♡あなたside♡
私には片想い中の相手がいる。
それは同級生ではなく、数学の吉野先生。
そして今は授業中。
"今日もかっこいいな"
そう眺めていると指名されていたらしい。
慌てて返事をすると、苦笑される。
答えを言い終わると同時に鳴ったチャイム。
礼をする前、思い出したように付け加えられる一言。目が合うのは私が数学係だから。
…
クラス分のノートを回収して職員室を覗き、
彼がいることを確認してから入る。
そう私の大好きな顔で微笑んでくれる。
それに胸が高鳴るのを感じる。
会話を続けてくれた嬉しさか…
心を読まれたからか…
先生からの質問にたじろぐ。
「そんなこと言ってると、また赤点取るぞっ」
(嫌われちゃうかな…)
好きな人に嫌いになられたら、ショックが大きい。
だけど今やっている二次関数は私の1番苦手な単元で、授業のペースについて行くことができず分からない問題ばかり…
(恐い…)
そんな想いから思わず俯くと、
「あなたが頑張ってること知ってるから…」
また私の気持ちを察すように頭に手を置き、
優しい言葉をかけてくれる。
その仕草と、急な名前呼びに私の鼓動は早鐘をうつ。
ふとした時に"あなた"そう呼ぶ先生。
(きっと意味なんてないんだろうな…)
職員室の扉を閉め、高鳴る胸を押さえながらも頭は何故か冷静だった…
…
放課後の職員室。
"いつでも質問来ていいから"
そう言われた私はその日早速聞きに来ていた。
教科書を広げてその箇所を指すと、そこを覗き込み一言呟く。そして隣の椅子に座るよう促してくれる。
そして私が理解するのを1つひとつ待って
教えてくれる先生。
先生が作業をする横で解き始める。
チラッと横目で見れば、真剣な眼差し。
そう聞いてくる先生に
咄嗟にノートを隠しながら嘘をつく。
この時間を1分1秒でも長く続けるために…
でもこの後私は、
引き伸ばしたことを後悔することになるんだ…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。