第3話

sympathy-第1章-
802
2021/01/31 11:00
☆壱馬side☆

夢をみていた。

…俺があなたの名を呼ぶと、微笑みながらこっちへ来る。…そして俺が手を広げるとちょっと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに飛びついてくる。…そして俺が抱きしめると「壱馬くんあったかいね//」そう幸せそうに笑う。
ふと"何か"が唇に触れた気がした。そして…
(なまえ)
あなた
壱馬くん…ごめんね
さっきまで笑っていたはずの彼女は、今度は目に涙をためてそう言い、俺の腕からすり抜けて行った。…追いかけなくちゃ!
(っあなた!!)
そこで目が覚めた。
妙な胸騒ぎを抱えながら…隣を見る。
(あなたは…?)
慌てて寝室からリビングに行き、部屋中探すが彼女の姿はどこにもない。
(夢…じゃなかったのか?)
外まで探そうと玄関で靴をは引っ掛けている時、ふと彼女の靴がないことに気づく…でもない靴は黒のローファー。

そこでようやく仕事に行ったことに気づく。
川村壱馬
川村壱馬
…アホやな、俺
自嘲気味に笑い、朝からどっと疲れた身体を鼓舞し、仕事に向かった。
…その胸騒ぎが本当になるとも知らずに。
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♡あなたside♡

今日は半日休暇を申請していた。そのため午前中だけ仕事に行き、13時頃退社。理由は壱馬くんとの記念日のため、いつもより豪華なご飯を作ったり、部屋の飾りつけをしたかったから…。
(なまえ)
あなた
まぁ…意味なかったけど、
1人呟いたそれはオフィス街の空に消え、私はそのまま家に帰る…。
そして違う目的で取った半日の休みを利用して、自分の荷物…服、バッグ、メイク道具、アクセサリー…それらを大きめのキャリーケースに黙々と入れていく。
…壱馬くんに「可愛い」と褒められた服、壱馬くんにプレゼントして貰ったバッグ…なんて考えていたら、涙が出てしまいそうだったから。
(大体…まとめ終わったかな?)
あと1つ。
これは…どうしよう。
でも壱馬くんを忘れるため…そう心に決め、それを机の上に置く。…手紙を添えて。
時計をみると、16時を少し過ぎている。
(なまえ)
あなた
…まだ帰ってこないよね?
そう呟き、最後に冷蔵庫ある食材で保存が効きそうな料理を作り、タッパーに詰める。
(っ…よし!)
…これで本当に最後なんだ。そう思うと、さっきまで我慢していた涙が途端に溢れてくる。
(なまえ)
あなた
さようなら…壱馬くん
2人で住み始めた記念に、と撮った写真を胸に抱きそう呟いて部屋をあとにした。

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