♡あなたside♡
(告白、しちゃった…)
そう我に返った時にはもう遅くて、
瞳を大きくして驚いている彼。
タイミングが違うことなんて自分でも気づいていた私は、焦り思ってもいないことを口走る。
そして、彼から逃げるようにその場を後にした…
…
☆慎side☆
"好き"
逃げるように走る背中を眺めながら呟く。
(だとしたら俺、あなたに辛い想いさせてた…)
無神経に恋愛相談なんてして…
彼女はいつも笑顔だった。
背中さえも見えなくなった彼女に向かって問いかけた言葉は夜の空に虚しく消えていった。
…
♡あなたside♡
帰ってきたと同時に自室のベッドに倒れ込み、呟く。
1人になると押し寄せてくるのは後悔ばかり…
(でも私の気持ちに気づいて欲しかった…)
(胸のいたみを彼にうつしたかった…)
最悪の想像ばかり繰り返した頭のまま、
気づけば私は眠っていた。
…
それから1週間。部活で会うことは避けられないが、
行く時間をずらしたり…
なるべく目を合わせないように…
でも、
太陽がさんさんと輝くお昼過ぎ。
午前中の部活を終え帰っている途中、彼に後ろから声をかけられ腕を掴まれた。
…
☆慎side☆
家に帰った俺はそのまま自室に向かう。
家が隣同士、しかも俺と彼女の部屋からはお互いの部屋が見える。
"宿題見せて"、"ボールペン貸して"
LINEをすれば窓が開いて互いに手を伸ばす。
そんなに近い距離にいるはずで、
物理的な距離は変わっていないはずなのに、
今日はとても遠く感じた…
…
それから1週間。
何件送っても既読がつくことはない。
"部活一緒だし"
そう思っても行きも帰りも彼女の姿はない…
目も合わない…
(避けられてる…よな?)
そう気づくのに時間はかからなかった。
でもどうしたら…
そんな想いが自分でも気付かぬうちに態度に現れてしまっていたのだろう…
ある日の部活終わり、
同じ部活、歳の北人に笑いながら声をかけられる。
「行きも帰りも一緒だったのに…」
いつもは天然なのにこういう勘だけ何故か鋭い。
吸い込まれそうな瞳から逸らせなくなり、全て話す。
…
夏祭りの日、先輩に告白したこと…
その帰り道、あなたに告白されたこと…
静かに聞いてくれていた彼は、全て話し終えた俺を確認し口を開く。
それに答えると続けて彼は確信をつく一言。
最後は背中まで押してくれて…
そんな彼に感謝し、彼女の家に向かって走る。
(もう迷わない…)
大切なことに気づけたから…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。