第42話

思い出せなくなるその日まで-第3章-
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2021/03/07 11:00
♡あなたside♡
夢をみた。

12月の金曜日。クリスマスの日。
(なまえ)
あなた
わー綺麗!
竜希
竜希
そーだな…
私たちは仕事を終えて、
イルミネーションを見に来ていた。
(なまえ)
あなた
でも寒いね!
竜希
竜希
寒いな!…これでどうだ?
そう言いながら手をとり、
自分のポケットに入れてくれた"彼"。
(なまえ)
あなた
…っ//
急なそれに恥ずかしくなり、周りを見渡せば同じように恋人たちが楽しんでいて
私たちのことを気にも止めていない。
そこで映像が突如入れ替わる。

冬の中でも特に寒い2月のある日。
(なまえ)
あなた
寒いから閉めてよ!
竜希
竜希
なんで?いいじゃん!
「澄んだ空気…」

そう言う"彼"にイラっとして、
(なまえ)
あなた
寒いって言ってるじゃん!!
そう強く叫んでしまい、ケンカしたままお互い口をきかずに寝た夜。






その時、遠くから朝を告げる目覚ましの音が響き、私は現実に引き戻される。

"彼"がこの世を去って1週間。


ずっと夢なんてみてなかったのに、
今日のそれは鮮明に残っていた。
(なまえ)
あなた
あれは幸せだったんだな…
当たり前なんかじゃなくて…
愛おしい日々だったんだ。ケンカしたことさえも…

そう思い出に浸りそうになるも、
視界の隅に入った時計に
(なまえ)
あなた
支度しなきゃ…
そう起き上がる。

あの日『彼』に命を救われて以来、"しにたい"そう思うことはなくなったけれど、
なにかする気は起きないままで…

でも仕事をずっとお休みする訳にもいかず、身体に鞭をうって仕事に向かう。
いつも通りに電車に揺られて、仕事をして、また電車に揺られて家に帰る。

でもこの日は2つだけ少し違った…
1つ目は雪が降ったこと。

ひらひら舞うそれを、傘を持ってこなかった私は"ただ冷たくて邪魔"そう思ったこと。

そしてせめて"彼"が傍にいてくれれば…
そう叶うはずもないことを考えてしまったこと。
そして2つ目は…
(なまえ)
あなた
…っ!いつき…さん、
でしたっけ?
家の前に誰かいるのが見え、近づくにつれマスク越しでもわかる見覚えのある顔に私は思わず声をあげる。
藤原樹
藤原樹
正解!
「よかった、生きてて…」
そうまた"彼"と似た表情で笑う彼。
それにまたドキッと心臓を掴まれた感覚を抱きながらも本音を返す。
(なまえ)
あなた
あれから1度も思ったことないです
藤原樹
藤原樹
そう…なら、よかった!
(なまえ)
あなた
では!
話は終わったとエントランスに入ろうとする。

しかし、
彼にまたその腕を掴まれ、行く手を阻まれる。
藤原樹
藤原樹
部屋…入れてくれないの?
(それは、暗に"入れろ"そう言っているだろう…)
そんなことを心に抱きながらも、話を聴いて貰ったお礼もできていないことを思い出し、
(なまえ)
あなた
…どうぞ
そう招き入れた。

けれど、それをすぐに後悔することになる。
"彼"のことを思い出さないようにと片付けられずにいたもの達で溢れている部屋は、客観的に見ても綺麗とは言いがたかったからだ…
藤原樹
藤原樹
……
無言の彼。

(絶対、ひかれたな…)
(なまえ)
あなた
汚くてごめんなさい…
私の声に我に返ったように、私を見た彼は寂しそうに微笑んで…
藤原樹
藤原樹
今にも帰ってきそうだな…
お揃いのマグカップ…
2つ並んだ歯ブラシ…
1人にしては大きいダブルベッド…
写真たてで輝いた笑顔を覗かせる私たち…
それら"思い出"を見ながらそう呟いた。

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