☆慎side☆
いつもの席に向かい合わせに座り、飲み物と食事を頼む。その行動が今日はやけに早く感じた。
彼女との会話はいつものように楽しくて…
あっという間に時間は流れていった。
丁度グラスを飲み干した俺と時計を交互に見ながら言う彼女。つられて時計を確認すると…
24時を回っていた。
(今日こそは払います!)
そう先に会計に行ってしまったので店の外で待ち、出てきた彼女に声をかける。
"いえいえ"と小さく首をふり、少し照れたようにはにかむ彼女。
帰り道も話は尽きない…
でも、駅まで3分の道のりは待ってくれない…
そして遂に改札前まで来てしまう…
これじゃ今までと何も変わってない…
じゃあ、なんて彼女を引き止める?…
そんな口実なんて思いつかない…
けど、あなたさんとまだ一緒にいたい…
その瞬間、俺は走り今にも改札を抜けようとしている彼女の腕を掴んだ。
驚いて目をまんまるにしている彼女。でも構わず、
そう伝えた。すると今度は頬を染めて、
(だから期待していいよ…)
シンプルだけど、俺の想いを真っ直ぐに…
すると彼女から…
そんな予想していなかった言葉が返ってくる。
…でも、そうなら
ほっとした瞬間、周りの音が入ってくる。ホームへ急ぐ人々の足音…愉快な話し声…
(こんな簡単なことで良かったんだ…)
そう笑いかける彼女。
確かにそうかもしれない…
そうも心から思えるんだ。
そして、終電を知らせるアナウンスが流れ、遠くから電車が来る音が聞こえてきた。
でも、俺たちが繋いだ手を離すことはなかった…
✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。