24時20分…
それは彼女と過ごすことのできるタイムリミット
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☆慎side☆
(…?)
手を顔の前でヒラヒラさせながら俺の名を呼ぶ彼女の声で我にかえる。
ボーッと歩いていて気がつけば俺たちは改札前まで来ていたようだった。
送るってのは口実でほんとは少しでも彼女の傍にいたかっただけ…
ぺこりと頭を下げながら言う彼女に、手をふりながら…
そう返すと、彼女はもう一度お辞儀をし改札をぬけホームへの階段を下っていった。
俺はその様子を彼女の影が見えなくなるまで眺めていた。…しかし彼女が俺を振り返ってくれることはなかった。
そして言えなかったな…
(あなたさんのことが好き)
そう呟いた声は、終電を急ぐ人々の喧騒に紛れ消えていった…。
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♡あなたside♡
(今日もか…)
私は1人最終電車に揺られながら小さくため息を吐く。…これで何度目だろう。指折り数えてみても両手では足りそうもない。
(期待しても意味ないのに…)
毎回誘われないことが意味していることなんて1つしかない。彼は私になんて興味がないのだろう。
終電ということもあり、少し混みあった車内で1人自問自答を繰り返す。
考え込んでいると…
『まもなく松原〜松原〜お出口は右側です』
家の最寄り駅に到着することを告げるアナウンス。
駅に着き、帰り道を歩きながらも考えるのは彼のこと。…先ほど言われた"気をつけて帰ってね"や"また明日"が頭の中を駆け巡る。
(こんなに好きなのに…想ってるのは私だけか…)
そう1人呟いた声は、街灯がポツポツしかない暗い夜道の空に消えていった…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。