♡あなたside〜past〜♡
彼は静かにそう呟いた。
逆に驚いた私は大きな声で驚いてしまう。
彼の夢が叶ったことが嬉しくて自然と涙が頬を伝う。
雫を優しく親指で拭いながらそう返す彼。そして…
そう優しく笑った彼。それにしみじみと返せば、
"1人になんてさせへんから…"
今度は真剣な眼で言ってくれたっけ…
…
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♡あなたside〜now〜♡
そう1人の部屋で呟く。
あの頃の私と何が違うのだろう…
そんな答えのない問いを考え続けて…鳥の鳴く声に、一睡もできないまま朝を迎えたことに気づく。
(はぁ…)
ため息をころして、身支度を整えご飯を食べて家をでる。そして電車に揺られて、目的地に着く。
そしてある1つのビルを見上げた。
大きなそれは、私が働いている企業のビル…
結構大手の化粧品を扱う企業に内定いただき、働き初めて2年が終わろうとしていた。
(だからだろうか…)
"いつもと同じ1日"が変わった理由は
朝の朝礼にて上司が放った言葉。
それに女性の多い職場からは小さな歓声があがる。
私も声こそ出さないものの、彼のいるグループの名前に胸が高鳴っていた。
「それで…」
上司は私たちを見渡して続ける。
(…えっ!)
そこで目が合う。
目で「できる?」と聴いてくる上司に…
心臓の音が聞こえないように祈りながらそう返した。
…
朝礼後にすぐに、上司から詳細な情報を聴く。
1週間後にプレゼンをする予定なこと…
そこで受けてくれるかが決まること…
「もちろん私も確認するし!あなたももう3年目だし、大きな仕事経験してみて欲しいから…」
そう付け加える上司に心でお礼をいいながら…
そう返し、早速資料作りに取りかかる。
…
壱馬に会えるかもしれない…
青いまま枯れていった花のように…
好きなままで消えていったこの想いが報われる日が来ますようにと願いながら…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!