-one year ago-
♡あなたside♡
高校の入学式。
よりによって今日私は体調を崩してしまった。
(でも学校行かないと…)
(もし今日休んで、学校行った時にはもうグループができていたら…)
そんな思いから、
必死に新しい制服に袖を通し家を出る。
おぼつかない足取りのままやっとの思いで、学校に着く。そしてクラス掲示板をぼんやり眺めていると、横から抱きつかれる。
中学から一緒の明莉。
名前の通り明るく、その明るさは周りを笑顔にさせる。私もそんな彼女にたくさん支えられてきた。
くっついている所から
熱があることが伝わったのだろう…
だから迷惑かけないようにそっと離れ、
必死に笑顔をつくる。
心配そうに顔を覗き込む彼女にそう返しながら教室に向かった。
…
"大丈夫"
そう言ったものの、体調は悪くなる一方。
そして遂に
"一同起立"教頭の一言に皆が立ち上がった時、
目の前が真っ白になり、フワッと身体が浮く感覚。
(やばっ…倒れる)
…
そして気がつくと、真っ白の天井。
(あれ?入学式…)
状況が飲み込めないまま、声のした方を見る。
「ここは保健室、体調どう?
…ってか熱あるのにきたでしょ」
固まったままの私の心を見透かしたように笑う彼。
「倒れて頭とかうたなくてほんと良かった…」
当たっていたそれに素直に謝ると、
彼はほっとした表情で呟く。
(助けてくれたんだ…)
この時私は、まだ名前も分からない吉野先生に
"恋に落ちた"
…
あの時助けてくれて、優しい言葉をかけてくれた先生
それは"私にとっての光"だった。
だから、
今度は"私も少しでも力になりたい"
そう想ったんだ…
"彼にとっての光になりたい"と…
…
最初は、好きな人が目の前にいる…
話せなくても毎日会えることが幸せだった…
でも、
今は抱きしめたい…
彼の香りに包まれたい…
そう貴方のことになると欲張りになってしまうんだ
「叶わないのに、忘れられない…」
目を閉じても、浮かんでくる彼の存在に一睡も出来ないまま朝を迎えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。