第51話

わたがし-第4章-
209
2021/03/24 01:00
☆慎side☆
長谷川慎
長谷川慎
綺麗ですね…
佐藤先輩
佐藤先輩
そーだね…
"花火じゃなくて、花火に照らされた先輩が"

そんなふうに伝えられたら良いのだろうか…
その後も大した会話もないまま、有終の美を飾るとも言われるスターマイン花火が咲き始める。
(このままだと今日誘った意味がないよな…)
長谷川慎
長谷川慎
先輩…
佐藤先輩
佐藤先輩
…ん?
そう思った俺は意を決して、花火の音に負けないよう名を呼ぶ。その声に花火から俺に視線を移す彼女。
長谷川慎
長谷川慎
っ好きです//
最後の花火が上がる直前の静けさの中、
自分の精一杯の気持ちを伝える。
佐藤先輩
佐藤先輩
っ!ありがと…
「でも、ごめんなさい…」
後者は打ち上がった花火と
周りからの歓声で聞こえることはなかった。
しかし、彼女の表情から何を言われたのかなんて容易に想像できた。
長谷川慎
長谷川慎
ありがとうございます…
伝えれて良かったです//
佐藤先輩
佐藤先輩
優しいね、慎くんは…
何か言わなければ、その想いから言葉が口を衝く。
それに微笑んでくれる彼女。
佐藤先輩
佐藤先輩
じゃ、またね…
そう去っていく彼女。
花火の終わった広場は帰路を急ぐ人々でごった返し、水色の浴衣姿はそれにすぐ呑まれ消えていった。


♡あなたside♡
陽葵
陽葵
楽しかったね!
彩光(あかね)
彩光(あかね)
また部活でねー
最後まで花火を楽しんだ私たち。
広場の空いている場所を探すうちに彼の姿は見えなくなっていた。
彼女たちと最寄り駅で別れ、帰路を歩く。
(なまえ)
あなた
ありがとーまたねっ
暫く歩いていると、前に見覚えのある人影…
(なまえ)
あなた
まこっ
今日ずっと目で追っていたこともあり、
1人の彼に気づけば声をかけていた。
長谷川慎
長谷川慎
……
(聞こえなかったかな…)
振り向かない彼に今度は近づいて肩を叩く。

彼は振り向かないのではなく、
"振り向きたくなかった"のだと察せずに…
長谷川慎
長谷川慎
っ!あなた…
そう振り返った彼に、はっとする。

理由は…
彼の涙を見たから。
(なまえ)
あなた
……
長谷川慎
長谷川慎
だっせぇ…
何も発せない私に、彼はそっぽを向いてそれを拭いながら呟く。
("どうしたの?"なんて聞けないよね…)

(先輩のことだってわかるもん…)
言ったことは行動に移すことができる彼だから、
それは1番近くにいた人としてわかっていたから…

(告白したんだろうな…)
(なまえ)
あなた
ダサくなんてないよ
そう思ったと同時に口から飛び出す言葉。
長谷川慎
長谷川慎
っ!ごめん、今日だけ…
そう呟くと彼の頬を再び涙が濡らす。
私はそんな彼の背中を擦り続けた。

どれくらい時が経っただろうか。
長谷川慎
長谷川慎
ありがと、傍にいてくれて…
そう言う彼の表情は先程より幾分すっきりしたように見える。

(よかった…)

ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、
長谷川慎
長谷川慎
やっぱり持つべきものは
幼なじみだな…
そう矢のように放たれ、私の心を射る言葉。
だから思わず返してしまったんだ。
理由は

彼の涙を見たからか…
先輩に振られたとわかったからか…
はたまた、
彼が嘘偽りなく"ありがと"そう言ってくれたからか…
(なまえ)
あなた
っ私は幼なじみって思ってないよ
"えっ"そう驚いた瞳をみせる彼。
それにかわまず続ける。
彼の頬に残っていた1粒を親指で拭いながら…
(なまえ)
あなた
まこのこと、好きだから…

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