第5話

sympathy-第3章-
750
2021/02/02 11:00
☆壱馬side☆
マネージャー
マネージャー
おはようございます!…壱馬さん?
川村壱馬
川村壱馬
っ…ん?
マネージャー
マネージャー
どうしたんですか?ボーッとして、
川村壱馬
川村壱馬
何もないですよ…
朝、予定通り迎えにきたマネージャーさんの車に乗り込む。正直"あなたがもし帰ってきたら…"そう思うと家に居たかったが、理性がそれを止めた。

しかし、心ここに在らずだったようで心配そうな顔とバックミラー越しに目が合う。今俺はきちんと笑えているだろうか…?
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今日は新曲の振り落としの日。
リハ室に着くともう殆どのメンバーが到着しているようで挨拶をしながら入る。
川村壱馬
川村壱馬
おはようございます!
(おはよ〜)
(おはようございます!)
あちこちから返ってくる声。空いている陣さんの隣の席に腰を下ろし、準備をする。それが終わった頃…
LIKIYA
LIKIYA
皆揃ったし、始めますか!
LIKIYAさんの声が響き、皆所定の位置に集まる。まずはサビから、そう言って振り落としが始まる。
陣
…おーい、壱馬?
LIKIYAさんが先陣をきって進めること1時間。サビはボーカルも踊るため、一緒に覚えていっていた…しかし、陣さんの声にハッとするということは集中できていなかったのだろう。
川村壱馬
川村壱馬
っ!すみません…
そこでタイミング良く、休憩の合図がかかる。
陣
何かあったん?
席に戻ろうと歩いていると、隣にやってきて声をかけてくれる。
いつもメンバーのことを気にかけてくれ、異変に直ぐに気づく。だから陣さんには隠し事は出来ない。
…でも今回は"自分だけではない"。
川村壱馬
川村壱馬
いえ…何もないですよ
そう咄嗟の笑顔で誤魔化す。
陣
そう?…何かあったら言うんやで!
すると…陣さんは何かあることには気づいて、でもそれ以上深堀することなく、合間にTikTok撮影を行っている翔平の元へ去っていった。
(心配かけないように…今は仕事に集中しないと!)
その背中を眺めながら決意した。
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そしてあなたが出ていって、そのまま1週間が過ぎた。
(どこで間違えたんだろう…)
毎日電話してもアナウンスの声…メールを送っても既読はつかない。それでも、ふと頭を過ぎるのは彼女のことばかり…
(俺はこんなにあなたを想っているのに…)
なんて思いながら…窓から見える街灯をひとり、指でなぞり消すを繰り返す。もう遅いかもしれないが…
そんな不安を表すように、夜の雲はどんよりとしていて…まるでこの時間が永遠かのように、ゆっくりと流れていた…

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