【碧side】
ボケた先輩に
適当に突っ込みを入れて横顔を盗み見る。
私服 かっこよすぎるよ先輩……。
そんなこんなで射的屋の前に着く。
あのペンギン可愛い……。
半目気味で眉太な青いペンギンに
心を射抜かれる。射的だけに。
言いかけてハッとする。
あんな可愛いものが好きなんて言ったら、
先輩絶対からかうに決まってる!!
射的屋のおじさんに鉄砲を渡してもらう。
狙うはもちろん、ペン太。
あ、今名付けました。
♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜
しかしそういう先輩は
ゲーム機を当てているのでぐうの音も出ない。
取れないなら仕方ない。
さようなら、私のペン太……。
端の方にあるヨーヨーすくいに行く途中、
光流先輩が急に叫んだ。
そう言って人混みに消えていく。
どうしたんだろ。
本山先輩がヨーヨーすくいで無双し終わった時に、ようやく先輩は帰ってきた。
あの青い半目眉太のペンギンを抱えて。
そう清々しい顔で笑う先輩の手に、
ゲーム機はなかった。
先輩は憮然とした顔でペン太を差し出した。
この熱帯夜を走ってきて、
笑顔には汗が光っている。
……ほら、その笑顔。
反則なんですよ、いつも。
私ばっかりドキドキしてる。
ニヤける顔を見られないように、
私はペン太を抱きしめた。
先輩がくれたものだから。
そう返すと、先輩は黙りこくった。
図星かよ。
先輩は遠ざかるのに、
胸のドキドキは止まない。
星奈がため息をつく。
そう揶揄すると、星奈は軽く微笑んだ。
『叶わないんだったら、せめて応援しなきゃね』
星奈の視線を追った空には星は無くて、
ただ屋台の煙だけが伸びていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。