…… 山から吹き降りた風が
屋外フリスビー場の囲いを超え
芝生を撫で
フローリングの開け放しの射場に吹き込んでくる。
風に髪を靡かせて、
その清涼な感覚に
私はフリスビーを持ったまま立ち尽くす。
苦笑して そう返す。
優夏先輩に5枚のフリスビーを預ける。
えっ、と、
投射位置への入り方は……
って、
平田先輩言ってたっけ……
と、両手の甲を腰にあてる。
…… 前から思ってたけど、
これ何の意味があるんだろ
先輩の不思議そうな声に 思わず問い返す。
えぇ、間違いやったんやっぱ……?
何か変だと思ったんよな…… 笑
両足を軽く開き、的に対して左90°を向く。
私たちは、基本的に投げ方は
バックハンドでクラシックグリップ。
バックハンドっていうのは、
フリスビーの投げ方って言われて
一般的に想像される投げ方のこと。
クラシックグリップは、
ディスクの上の面に親指、横の面に人差し指、
残りの指は裏側に置く。
初心者はこれが一番安定するらしい。
背筋を伸ばし、構える。
ディスクは水平に保つ。
そのまま、胸の前で水平にスイングし
放つ。
けどフリスビーは、
先輩たちがやってたみたいに真っ直ぐ飛ばず、
的に到達する前にフラフラとUターンして落ちた。
リリースっていうのは、
そのままの意味で、
フリスビーディスクを放すこと。
水平にかぁ……
何回か言われたことあるから、
気をつけてたつもりだったけど、
やっぱ 実際やると難しいなぁ
それを そつ無くやってる先輩たちって
やっぱ 凄いんだな。
優夏先輩から 1枚受け取り、
一礼して 投射位置に入る。
背筋を伸ばす。
ディスクは水平に、水平に……
それを考えていたら、
リリースのタイミングが遅くなってしまった。
するとディスクは
大きく曲がって的を避けるように飛んだ。
ううむ、上手くいかない……
先輩はいつも 前向きな言葉も
一緒にかけてくれるからやる気が出る。
3枚目。
背筋を伸ばして、正面の的を睨んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。