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第38話

番犬と太陽
草むしりを再開すると、
本山先輩に声をかけられた。




本山先輩
本山先輩
橋川
弥生
弥生
? 何ですか?
本山先輩
本山先輩
缶の袋さ、1個持ってくれ
本山先輩
本山先輩
光流に押し付けられた……orz
弥生
弥生
oh......
弥生
弥生
わかりました。手伝います
弥生
弥生
アレですよね、
体育館裏のごみ捨て場まで
運べばいいんですよね?
本山先輩
本山先輩
あぁ、すまん



本山先輩は一回り小さい袋の方を差し出した。








……でも、袋は2袋。

しかもそんなに重くない。
先輩なら両手でどっちも運べるだろうに、

なのに、何で私に声掛けたんだろう??








それから私達はごみ捨て場へと向かった。








ごみ捨て場っていっても、正確に言うと
ごみ捨て小屋。



立て付けの悪いドアを開ける。



ギィィィイィィィイ



弥生
弥生
……っ、嫌な音っ



『缶、瓶』と書かれた場所に袋を放る。




そしてまた、嫌な音。






弥生
弥生
……よいしょっと、
じゃあ先輩、戻りましょうか
弥生
弥生
……先輩??




先輩は反応せず、こちらをじっと見てる。





本山先輩
本山先輩
……少し、話があるんだけど
弥生
弥生
はい……?
本山先輩
本山先輩
……橋川は、
本山先輩
本山先輩
……平田が好きなんだよな?
弥生
弥生
……??
いきなり、どうしたんですか……?



本山先輩が息を吸う。

冷たい目。強い目。





本山先輩
本山先輩
単刀直入に言う。
本山先輩
本山先輩
ミーハーみたいな、
半端な気持ちなら、平田に近づくな
弥生
弥生
……どういう意味ですか??



話の筋が見えない。

ミーハー? 半端??


何で本山先輩がそんなこと……?





本山先輩
本山先輩
……話せば、長くなるんだが。



そう前置きして、本山先輩は語り始めた。

私の知らない、智希先輩の話。









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……客観的に見てさ、
平田って悪くない顔してるだろ。


それで、ああいう1歩引いたというか
どっか人間離れした雰囲気、

同級生の女子の言葉を借りたら
「ミステリアス」ってやつ。

だからか、まぁ、騒ぐ奴が一定数いる。



高校入学して、すぐフリスビーで頭角 現して、

去年の6、7月くらいだったかな、
平田は特にモテてたんだ。





……上原、いるだろ。




その頃くらいから、上原はやたらと
平田にベタベタするようになった。




ちょうど元彼と別れたばかりだったらしいな。



……上原あいつは、本命は30越えとか
言いながら、結局色んなのに手ぇ出してんだよ。







まぁ、平田はアタックされても
全然気づいちゃいなかったけど。










……去年の9月に。


オチない平田に業を煮やして、

上原は強行手段に出た。




上原先輩
上原先輩
智希!! 話があるの!
部活が終わって、体育館前で。


帰ろうとする平田に
上原が大声で声をかけた。


部活後 すぐだから、
当然他のフリスビー部員もいる。


体育館部活は多いから、
バスケとか卓球とかバレーとか、
他部活のやつだっている中。





上原先輩
上原先輩
のんね、智希と付き合いたい!!
付き合って欲しいの!!

当然、周りはザワつく。

平田先輩
平田先輩
……っ、考えさせて



平田はそう言って、逃げるように帰ったけど。




次の日から、周りは無責任に騒ぎ立てだした。




田中
なぁ、平田!!
告白の返事どうすんの!!w
佐東
いいなぁ!!
あんな美人から告白とか!!w
田中
お似合いじゃん!
はよ付き合えよ!!w








……平田あいつさ、
人の頼みとか、断れないタイプで。
その上周りがそんなふうに言ったらさ……

断れる訳無ぇじゃん。




付き合っちまったんだよ、平田は。





……10月にさ、新人戦があって。
水泳部の奴がな、インターハイ行ったんだよ。



そいつ 山田って言うんだけど、
そしたら山田、モテだしてさ。





……どうなるか、予想つくだろ??
こっからは、平田から聞いた話なんだけど。






上原は、今度は放課後の誰もいない教室で。


上原先輩
上原先輩
智希、別れよ


髪を弄びながら言ったらしい。



平田先輩
平田先輩
……一応聞くけど、なんで?
上原先輩
上原先輩
だって智希、のんのこと
好きじゃないでしょ
平田先輩
平田先輩
……
上原先輩
上原先輩
そんな状態で付き合うの、
のん辛いしぃ



それに。




上原先輩
上原先輩
智希あんたの身長じゃ、
これからもしデートする時に
のんヒール履けないじゃん
平田先輩
平田先輩
……わかった






……くだらない話だよ。




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本山先輩
本山先輩
……俺は、さ
本山先輩
本山先輩
そんなくだらない恋愛だのなんだのに
もう平田を巻き込ませたくねぇ


訥々と語っていた先輩はそこで黙った。



本山先輩
本山先輩
……それだけ、伝えときたかった
本山先輩
本山先輩
ごみ捨て手伝ってくれてありがとな
弥生
弥生
……先輩は、
弥生
弥生
本山先輩は、
智希先輩が好きなんですね
本山先輩
本山先輩
……
本山先輩
本山先輩
なんで
弥生
弥生
すごく智希先輩のこと考えてるから
弥生
弥生
……先輩が部内恋愛反対派なのも、
それが理由でしょう??


その想いは、あまりにも純粋で。



本山先輩
本山先輩
……番犬が傍にいたら、
半端な奴は寄ってこないだろ?



苦く笑って、フイと横を向く。



届けるつもりの無い気持ちは、
傍からはこんなに悲しい。




本山先輩
本山先輩
……俺は部活恋愛反対派だから。
本山先輩
本山先輩
だから、俺も部内の奴を
好きになんてならない



駐輪場を振り向く、その背中は広くて。



本山先輩
本山先輩
……ただ、大事にしたいだけだ。


私は息を吸う。



弥生
弥生
……私は、半端じゃないんで!!



先輩が、顔だけこちらに向ける。





「半端じゃない」

言うことで、自分を追い込む。





この「好き」は、エゴかもしれない。

本山先輩のような、愛とでも言うような、
そんな純粋な想いでは無いと思う。


本山先輩と、茜梨先輩。


2人が智希先輩を見てきた時間には、
及ばないだろう。





でも、それでも、

先輩と話す度に再確認してきた
この想いに、嘘も偽りもきっと無い。




弥生
弥生
先輩が番犬だっていうなら、
認めさせてみせますよ!!




笑え。




自信が無くたって、笑え。





一後輩に過ぎない、私の意地だ。




弥生
弥生
見てて下さいよ!!




本山先輩が、口を開いて、は、と笑う。




本山先輩
本山先輩
……楽しみにしとくわ



今度こそ本当に背を向け歩き出す。













と、ごみ捨て小屋の陰から人影。





晴樹
晴樹
……お疲れ様
弥生
弥生
……晴樹



その体操服に反射した白い太陽は、まだ沈まない。