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第15話

近づく県総体。
5月も中旬に差し掛かり、
いよいよ県総体は2週間後に迫った。
練習も選手の的練が中心になって、
私たち1年生は初めて、
実際の“フリスビーという競技”を見た。
フリスビーの競技は、
本当はフリスビーを風船に向かって投げて
風船を割るのが正式なルールなんだって。

決まった投射位置に立って
10mから30mほど離れた風船を狙う。

その間、投げない人達は後ろで待機。
普段の練習でただ投げるだけなのは
うちの高校独自の練習スタイルなのだと、
光流先輩に教えて貰った。
顧問の先生は、当てることよりも
投射姿勢とかの正しさを大事にしていて、
風船があると当てることを意識しすぎるから
ああいう練習方法をとっているのだと。
風船には、
10とか20とか50とかの数字がかかれてて、
それが得点を表してるみたい。

数字が大きくなればなるほど、
風船の大きさは小さくなる。
そんな風船がふよふよとあちこちで浮いてるのは、
なんだかファンタジックで気が抜ける。
けれど、
平田先輩
平田先輩
………………
ヒュンッ
スパンッ
光流先輩
光流先輩
………………
ヒュンッ 


バスッ
本山先輩
本山先輩
……………
ピュンッ

パァンッ
平田先輩は元から喋らないし
あまり笑わない人だけど、
普段にこにこしてる光流先輩とか
本山先輩も、今日はにこりともせず、
真剣に風船に向かう。
1年全員
1年全員
…………………
並々ならぬ緊張感の中で、
1年は息を飲んでそれを見守る。
風船の漂う空間を、異様なほどの沈黙が支配する。
『……これが、フリスビー……』





本山先輩
本山先輩
……
ヒュンッ
カランカランカラン………





本山先輩が、悔しそうに顔を歪めた。
投射位置から外れ、1年の近くに並ぶ。
本当は、10回投げれるんだけど、
外した人は、もう投げれない。

10回投げて、総得点が1番高い人が優勝なんだけど
10回投げるまでに他の人が全員脱落したら
そこで優勝が決まる。

それが、個人戦の試合形式。
優勝しようと思ったら、
当て続けなくちゃいけないんだ。








ヒュンッ
平田先輩が投げた。
パンッ


50の風船に当たる、が


カランカラン………
弥生
弥生
…………っ
弾き飛ばされてしまった。








……最近、正直平田先輩の調子が良くない。
平田先輩
平田先輩
………
表情には変化は相変わらずないけれど、
投げる時の雰囲気が
いつもより殺気立ってる気がする。
先輩
先輩
フリスビー拾い、お願いします!
1年全員
1年全員
はい!
そこかしこに落ちてるフリスビーと
風船の欠片を拾い上げ、
新しい風船を立てるのは1年と、
今投射の順番じゃなかった人の仕事。

今投げたのは男子の先輩達だから、
女子の先輩達と1年が
ダッシュでフリスビーを拾い集めにかかった。
弥生
弥生
(……これ…、平田先輩のだ。)
50の風船の前に落ちていた
濃い緑色の円盤。
丁寧に拾い上げた。
全て拾い終わって風船も立て終わったら
急いで体育館の端にはける。

それからフリスビーを、
本人の所へ返しに行くんだ。
光流先輩、本山先輩、山崎先輩と主将の先輩の。
一人ひとりに手渡す。
あとは平田先輩。

見ると、濃いめの眉が若干寄ってて、不機嫌そう。



割れないって、めっちゃ悔しいんだろな……








普段見ることの無い表情。
なんか精神的に追い詰められてそうで……




……助けてあげたい。




でも……
たかが 一後輩の私が声を掛けた所で……

逆に神経逆撫でしちゃうだけかも……

こんな時どう声を掛ければいいのかも分からない。




結局、
弥生
弥生
……平田先輩、どうぞ
平田先輩
平田先輩
ん、ありがと
眉間の皺は取れない。

上の空の先輩の姿、
悩んでいるような先輩の姿に、
ぎゅっと胸が締め付けられた。