無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第37話

サイダーと名前
周りの木という木から、蝉の声が聞こえる7月。


弥生
弥生
……あっつ……


軍手をつけた右手で、額の汗を拭う。


星奈
星奈
いや今日マジ暑くね?
弥生
弥生
それな
小雪
小雪
こんな日に草むしりとか鬼でな
弥生
弥生
折角の夏休みを棒に振りまくってる感
小雪
小雪
共感しかない
星奈
星奈
なぁ何で雑草って
こんな隙間から生えてくるん?
小雪
小雪
駐輪場のアスファルトからとか
根性有りすぎて草生える
弥生
弥生
生やすな



ツッコミもボケもキレの無い7月中旬。


炎天下、部活の奉仕作業として、
フリスビー部は駐輪場の草むしりをしていた。




全校生徒、自転車通学がメインだからね……。
駐輪場は バカみたいに広い。








弥生
弥生
心にはストレスを、
自分達の横には抜いた草を
溜め込むって感じか
小雪
小雪
誰が上手いこと言えと
???
なぁ




後ろから掛けられた声。




弥生
弥生
平田先輩


光流先輩じゃないの珍しい←



平田先輩
平田先輩
てみ、使う?
小雪
小雪
てみ?
平田先輩
平田先輩
これ




ゴトッと置いたのは ブルーの籠みたいな何か。

なんかこう、どじょうすくいで使いそうなアレ。




弥生
弥生
これ てみ って言うんですね……
弥生
弥生
ていうかもう既に結構草入ってる
平田先輩
平田先輩
あぁ、さっき俺が抜いたやつ
弥生
弥生
は、量エグくないですか??
平田先輩
平田先輩
俺の後にはぺんぺん草も生えぬ




ドヤる先輩。 可愛い。



平田先輩
平田先輩
まぁもうちょっとしたら
どうせまた生えてくるんだけどな
弥生
弥生
そしたらまた奉仕作業ですね
平田先輩
平田先輩
…… 生えてきませんように



両手を合わせる先輩。 可愛い。



弥生
弥生
……えっと、てみ、
ありがとうございます
平田先輩
平田先輩



会話が途切れる。




光流先輩
光流先輩
平田ーーー
これ抜けんのやけどーー!!
本山先輩
本山先輩
ヘルプみー
平田先輩
平田先輩
おけ





去っていく背中。










碧
なんか、弥生って先輩といると
だいぶコミュ障でな


いつの間にか寄ってきたみどりが言う。



うっ、胸が痛い←



弥生
弥生
なぁ、みどりはさ、光流先輩に
名前呼んで貰ったことある?
碧
え、うん。どしたん?
弥生
弥生
……いいなぁ、
推しに名前呼んで貰えるん……
碧
え、呼んで貰った事無いん?
碧
じゃあ 
「先輩 私の名前呼んでくださぁい」
って言えばいいやん
碧
仲良いんやしさ
弥生
弥生
それが出来るんだったら
私はたぶんとうの昔に告ってる。
碧
そっかぁ、
弥生 ヘタレ やもんなぁ
弥生
弥生
ひど
碧
事実。
弥生
弥生
辛いけど否めない。
碧
ま、頑張れ!!
弥生
弥生
無責任……




抜いた草を てみ に入れて、
みどりも去っていった。












と、後ろから遠慮がちに肩を叩かれる。



弥生
弥生
……平田先輩



なんか今日平田先輩の背後にいる率高いな。



平田先輩
平田先輩
先生から、全員に。
差し入れって。
光流が渡して来いって

そう言って差し出されたサイダーの缶。



先生 たまにはいい事するやん!!

光流先輩……、良い奴やん……←







プシュ、と音を立てて開ける。


横で平田先輩も缶に口を付ける。



上下する喉仏を盗み見つつ、私もサイダーを飲む。






爽やか。甘い。刺激。




……痛い。




弥生
弥生
……平田先輩。
平田先輩
平田先輩
んー?
弥生
弥生
……何で名前……
弥生
弥生
呼んでくれないんですか





先輩がきょとんとした顔をする。



……あぁー、やらかし。

言い方 完全にメンがヘラってる。













でも。さっきも。その前も。

名前を呼べばいい状況下で、


「なぁ」って声掛けたり

肩を叩いたり……






弥生
弥生
ひょっとして、
名前、覚えられてないですか……?





怖いこと。


話したりして、ちょっと仲良くなれたって
思ってるのは私の方だけで。



先輩からしたら、名前も覚えられないような、






エキセトラの1人に過ぎないんじゃないかって。






平田先輩
平田先輩
……橋川、弥生…… さん




知らず知らずに俯けていた顔を上げる。





平田先輩
平田先輩
名前、覚えてるよ。
平田先輩
平田先輩
何で呼ばなかったか……
呼んだこと無かったっけ……
平田先輩
平田先輩
タイミング無かった、とか?
平田先輩
平田先輩
いやでもあったよな……




1人頭を捻り 迷宮入りしてしまってる。





平田先輩
平田先輩
え、何で呼んだこと無かったんだろ
結構話してて、仲良い方なのにな……
弥生
弥生
ッ、 仲良い……
平田先輩
平田先輩
……え、違った?
平田先輩
平田先輩
だってほら、よく話しかけてくれるし
俺からも割と話しかけてるし、
平田先輩
平田先輩
晴樹と同じくらい
1番仲良い後輩だと
思ってたんだけど……



……晴樹め。



でも。



弥生
弥生
……ッ、や、仲良い、です。
仲良いが、いいです。
平田先輩
平田先輩
え、あ、うん。
平田先輩
平田先輩
……俺の勘違いじゃなくて、良かった



ふっと笑った。




平田先輩
平田先輩
……えぇ、でも何でだろうな……
弥生
弥生
……先輩。
弥生
弥生
もう、いいです。
理由なんて、もういいから、
弥生
弥生
ッ、……もう1回、
名前呼んで貰っていいですか
平田先輩
平田先輩
……や、弥生さん
弥生
弥生
さん、要らないです
平田先輩
平田先輩
……弥生?
弥生
弥生
……ッ、もう1回
平田先輩
平田先輩
や、弥生
弥生
弥生
もう1回おね



先輩が、ずいと手のひらをこちらにだした。



顔を俯けて、もう一方の腕で顔を覆ってる。




平田先輩
平田先輩
ちょ、タンマ。
なんか、その、照れくさいんで
今は辞めてもいいですか……




……そういえば、まあ、変だよなこの行動。


でも、お腹の底から、
嬉しさがどんどん込み上げて、

抑えられないんだ。





弥生
弥生
……先輩。
平田先輩
平田先輩
ま、まだタイムで
弥生
弥生
いや違くて



息を吸う。



弥生
弥生
智希ともき先輩って、
これから呼んでいいですか
平田先輩
平田先輩
……うん、別にいいけど……




怪訝そうに、先輩がこちらを見上げる。


弥生
弥生
智希先輩。





半瞬して、また先輩の頬が染まる。



平田先輩
平田先輩
ちょ、んだこれあっつ……
弥生
弥生
え、熱中症ですか
平田先輩
平田先輩
たぶん違う
弥生
弥生
……クッ 、 あははっ






先輩。可愛すぎ。



可愛くて。




尊くて。







どうしようもなく、好きだ。










智希先輩が、好きだ。








弥生
弥生
……ッ、?



感じた視線。


思わず、その主を探す。



ゾッとする。

冷たい目。








……本山、先輩……?




光流先輩
光流先輩
おい、本山〜!!



本山先輩が目線を逸らす。



光流先輩
光流先輩
何 ボウッとしてんだよ!
罰として、皆の缶、
ゴミ捨て小屋に捨てに行けよな!!
本山先輩
本山先輩
は、ちょ、マジかよ 勘弁!!




……気のせい、だよね。


本山先輩、温和な人だし。




カッと鬱陶しいほど照りつける太陽の下、
私はサイダーを飲み干した。


生ぬるい。