今日は初めての土日練習。
今は8時半。
練習は9時からだけど、
もう体育館に着いちゃった。
もしかしたら先輩に会えるかもって期待で
早く来すぎたかな…。
体育館3階の扉前に着いた。
中にいたのは、みどりん1人。
もうモップで掃除を始めてる。
口にした瞬間、顔が熱くなった。
露骨に話を逸らす。
ちょっと苦しそうなみどりん。
私も胸が苦しくなる。
私も、先輩のこと、なぁんにも知らない…
同級生だったら、尋ねやすいことも、
後輩だと中々聞きづらいことがある。
1年の、ハンデ…
先輩のこと、勝手に、好きかも〜なんて思って、
1人で浮かれてて。
皆にも先輩の話ばっかりして。
頭の中で勝手にイメージづくった先輩に、
勝手に、恋してることにして。
実際の先輩とは、話もろくにしてないのに。
実際の先輩のことは何も知らないくせに
キャーキャー騒いで。
そう言ってみどりんは、
はにかんで笑った。
2人で、顔を見合わせて、笑った。
2人の乙女の笑い声が、密やかに、
体育館3階に響いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!