第14話

第二章 聖なる宵とホットケーキ 第七話
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2022/04/29 00:07
 めんどくさい女だと思われるような発言をした。
 聖は急にどうしたのと言いたげな顔をする。ぱちぱちと瞬きを数回繰り返した後、こう話し始めた。
「好きなのは好きだよ? 勉強できて、運動もできて、優しくて、面白いし、嫌味もないし...完璧で天才だよね。私とは住む世界が違う...ってのは大袈裟だけど。尊敬してるよ?」
 予想通り、聖からは『完璧』『天才』という単語が出てきた。
 だから言おう。
 今しか言えない。
 わたしはわざとらしく息を吸って、吐いて、聖の目をまじまじと見て。

「わたしは、聖と対等な関係でありたい」

 そう言い放った。
 聖は予想外の発言に、黙り込む。
 そこでわたしは、言葉を続けた。
「わたしは、完璧でも天才でもない。料理はできないし、ゲームもできないし...。尊敬とか、そういうのじゃなくて、同じクラスの、同じ文芸部の、ただの冗談好きって思ってよ」
 聖は数秒後、口を開く。
「...そっか、そんな風に思ってたなんて...親友のつもりでいたけど、気づかなかったや。」
 自嘲気味に笑う聖に、わたしは表情筋緩め、優しい笑顔で言葉をかける。
「聖はわたしの、最高の親友だよ。これまでで、一番」
 聖はわたしの言葉に、今度は嬉しそうに笑う。
「うん、私も」
 そう、わたしたちはあくまで親友だ。
 最高の親友。
 たとえ恋人同士とはどのようなものか、実際に恋人となって色々やってみても、親友は親友。
 それは少なくともわたしの中では覆らなかった。だけど、最高の親友であることに今更気づかされた。
「...聖も、もう一枚の方は食べる?」
「あ...うん、じゃあ遠慮なくいただきます」
 今度はわたしが、ホットケーキを一切れ、フォークにぶすっと刺して、あーんと口を開ける聖の口にホットケーキを運ぶ。
 聖はぱくっとかぶりつき、フォークを抜くと、もぐもぐとホットケーキを咀嚼する。
「...んいひぃ」
「うん、おいしいでしょ」
 えへ、と笑うと、聖も「なんで宵が得意げなの」と笑った。
 暖かい空気が流れる。すっかり自分が熱を出していることも忘れていた。

「もう帰るの?」
「うん、一応門限的なものもあるしさ」
 わたしの子猫のような可愛らしい声に、聖は特に動じずそう答える。ツッコんででほしかったな、と一瞬思ってしまったが、脳内でぶんぶん頭を振る。
 わたしは塀の内、聖は塀の外。聖は鞄を肩に掛けて、帰ろうとしている。
「あ、まだ安静にしとくんだよ」
「うん、もう熱は引いたと思うけど」
「まあまあ」
 しばらくの沈黙の後。
「またね」
 聖が口を開いた。わたしはそれに答える。
「うん、またね。」
 こうして、聖は去っていった。
 なんだか、よくわからない時間だった。
 だけど、何かが変わった気がする。良い方向に転じた。
 それはとっても、嬉しいと思う。
 さて。
 これまでの聖との時間を思い返しながら、百合小説を書いていこうじゃないか。

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