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2021/04/19

第11話

もう逃げない
そんな中先に口を開いたのは彰輝だった。




「あのさ、来週の土曜日って夜はバイト?」

「え?来週の土曜日?何かあるの?」

「あぁ、昨日の帰りにさ、みなとみらいの店のこと話したでしょ?来週の土曜日に店がオープンすんだ。」

「へぇ。」

「そのオープニングの会に関係者枠で呼ばれてて、その日タダで飯食わせてくれるって言うんだ。イタリアンなんだけどお前、興味あったら一緒に行く?」

と、まさかのお誘いの話だった。

「え?私関係者じゃないけど平気なの?」

「俺の同伴1人なら誰でもいいんだと。明日までに返事しないとなんだけど、どうする?」

彰輝はクイッと日本酒を飲んで、新たに徳利からおちょこに注ぎ足す。

彰輝から誘ってもらえるなんてなんか新鮮だ。なんか兄妹っぽくなってきた…!まぁ、兄妹なんだけどね。

「行ってみたい!来週土曜日はバイトだけど今日と同じ時間帯だよ!夜は空いてる。」

「ほぉ。OK。返事しておくわ。」

と言って彰輝はスマホをいじり始める。

そう言えば彰輝の古くからの友人がお店やるって事だったよね。どんな人なんだろう。

「あのさ彰輝。古くからの友人ってどんな人なの?」

「あぁ、ホストん時の仲間だよ。同い年の。」

「あ…。」

彰輝はその人にLINEを送り終わったのか、スマホをテーブルに置く。

「俺と同じくらいの時期にホストやめて、そこから飲食の仕事の経験積んで、知り合いのオーナー伝いで店の箱譲ってもらったんだと。それでそいつが店長になったってわけ。」

あ、ホスト時代のか…。ホストってワードは今彰輝の口から聞いてもちょっと身構えてしまう。

でもまぁ、その人はきっとホストやめた後にすごく努力をしたんだろうな。じゃなきゃオーナーさんに譲ってもらうなんてそんな信頼築けないはずだもん。

なんて言い聞かせていると、彰輝からこんな事を言われた。


「俺に聞きたい事あるなら聞けば?」


「え…?」



「良いよ。何でも答える。」



彰輝は私の目を見てそのまま逸らさず真っ直ぐ見つめてきた。逆にそんなに見られると照れる。

でも、目を見て分かった。


彰輝、私から逃げる気はないって事か。
正々堂々向き合いますって言う、私への彰輝なりの意思表示なんだろうな。

私はグラスを置いて深呼吸をする。

「彰輝…私、彰輝の事をちゃんと知りたい。」


「うん。」


「私がずっと彰輝から逃げてたから、空いちゃった分の事、たくさん知りたい。」


「うん。」


「もう、彰輝から逃げないって決めたから。」


それから少し間を開けてからこう続けた。

「この間、優亜が彰輝の事根掘り葉掘り聞いてきたでしょう?その時に初めて彰輝の海外でやっていた事を知った時に、違和感を感じたの。なんで私、彰輝の家族なのに優亜を通して彰輝の事を知るんだ?って。自分の兄の事なのに、よく知らないってなんか、妹として変だと思ったの。でも、そうしてしまったのは、変わって戻って来た彰輝を見ようともせず、ずっと彰輝から逃げてきた自分のせいだってね。だから彰輝の事、なんでも知りたいの。」

それを聞いて彰輝は、

「そっか。」

と言いながら柔らかく微笑んだ。

「答えたくない事とかあったら、それは言ってね。」


「うん。」


このタイミングで丁度料理が運ばれてきた。あとはとんぺい焼きだけ。店員さんが戻った後、彰輝がその前に一つだけ聞きたいと言って、私にこんな事を聞いてきた。



「俺、当時のお前にどこまでやった?」

「え…?」

それを聞いただけで、彰輝が何の話をしているかがすぐ分かった。

「…あ、いや、単に自分がした事をちゃんと受け止めようと思っただけだよ。記憶飛ぶ程飲んでたから正直覚えてないんだ。でも、辛かったら話さなくて良いよ。」

と言う彰輝。私にとっては怖い出来事だったけど、でもそういう理由なら…と思って話してみることにしたした。


「あれは…私が中2とかの時だよね。」

「うん。」

私は話すか迷ったけど、彰輝が私にしてきた行為を全く覚えていないのは気に入らない。だから話すことにした。

「…彰輝には……服も脱がされてめちゃくちゃ色んな所にキスマーク残されたよ。必ず他の女性の名前を口にしてたよ。その行為中は1回も私の名前は呼ばれてない。だから、相手が私だと知らずにそういう事してたんだと思う。」


彰輝は黙って聞いていた。


「もみくちゃにされたし、色んな所を触られたし舐められた。それで、抵抗したら…何すんだって叩かれたり蹴られたりしたの。最初は彰輝に襲われただなんて、そんな事お父さんにもお母さんにも言えなかったし、学校行くのも辛くて。騰も怪我も隠して心配されないようにした。限度があったから途中友達にバレてすごく心配されたけどね。担任の先生にも伝わってた。それから彰輝は、毎晩ではないけど…1ヶ月くらいはこういう事が続いてたかも。」


彰輝は眉をひそめていた。


「…怖かった。本当に。ただ、妊娠沙汰とかにはなってないから。そこは安心して。彰輝は本番的な行為まではしてこなかったから。」


やっぱり思い出すだけでも泣きそうになる。今は平気になったけど、高校上がりたてくらいまではずっとフラッシュバッグする事が多々あった。

でも、私サイドにも問題はあった。

当時の私には全然分からなかった。なんで自分からこんなに声が出るのか、こんなにビクンとなるのか、訳が分からなかった。でも、その後何人かと付き合ってきた今の私の経験と知識量ならそれがどういう意味を指すか分かる。

彰輝はこの様子だ。ちっとも覚えてないんだろうけど、私は彰輝に恐怖で震えながらも、相当気持ち良かったのか、体は感じてしまっていたって事だ。

兄に自分の体が反応していただなんて、こんな事は彰輝には絶対に言えない。

私も思春期だったって事かな…?

でも、そんな反応をしてしまった当時の自分にも腹が立つ。

しかも彰輝は私を求めてるんじゃなく、酔いながら別の女の名前を呼んで私を襲った。名前は複数人いて覚えてない。それにムカついている私もどうかと思う。なんで彰輝に嫉妬するんだろう。


「あと、部屋で吐かれたこともある。」


彰輝は鼻で溜息をつき、自分の行動に幻滅しているのか、眉間にシワを寄せて目を閉じた。


「最悪だな俺。ごめん。本当に。」

彰輝は頭を下げてきた。

「……だから、隣の陸飛くんの部屋に逃げた。」

ちなみに陸飛くんの部屋は私の部屋の真向かいにある。距離も近く、陸飛くんの部屋には小さいバルコニーも付いていた。玄関から入ろうもんなら、陸飛くんの家族を起こしちゃうかもだし、見られたら変に心配されてしまいそうだ。だから陸飛くんの部屋へはこっそりそのバルコニーから移動させてもらってたのだ。

「…なのに俺は、陸飛に迷惑かけんなって怒ったわけだ。トコトン最低だな。」

彰輝はおでこに手を当て、絶望する。


「そりゃあ、出てけってなるわ。」



そう言って彰輝が予想以上に凹んでしまった。
彰輝が深い溜息をつき自分に絶望していた。まぁ、自業自得だからもっと絶望してもらっても良いんだけど。

「でもね彰輝、お父さんの葬儀の時に久しぶりに彰輝に会って、あぁ、お兄ちゃんいるってなんか安心だなって心が救われたの。すごくホッとした。」

「え…?」

おでこから手を放した彰輝は、すぐさま私の顔を見た。

「その時に、やっぱり兄妹の縁は切れないんだなって思ったの。それに彰輝、当時と全然違くなってて更生してたから、彰輝はちゃんと自分を見直して変わったんだなって思った。だからそれからはずっと、彰輝とちゃんと会って話さないとって思ってたんだけど、全然素直になれなくて。ずっと意地張って拒絶してた。ごめんね彰輝。」

私がそう言うと、彰輝は首を横に振ってこう返してきた。

「お前は何も謝んな。何も悪くない。」


とっても苦しそうな表情。彰輝のこんな顔なんて見た事ない。ちょっと声も震えてるし。


「彰輝、本当にもう大丈夫だよ。だから今日は全部奢りね。」


彰輝はフッと笑って首を縦に振る。


「全然比になんねぇ。」

って。



するとこのタイミングで優亜がやってきた。





続く