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第1話

ぼく
213
2021/05/11 04:02
「もふもふだぞーっ!」

ぼくは、ピュアっピュアのショタひつじの
ぽむ・めるとだ。

ぼくはいつもどこか寂しさや虚しさを感じていたんだ。

そんなとき、ろきはぼくのことを
買い付けてくれた。

そうだ、ちょうど今ぐらいの季節だった。
緑が青々と茂った、
太陽さんがぽかぽかと心地いい季節だったんだ。

自分が周りとは違うと気がついたのは…。





みんなずっと一緒だった。

楽しいことも悲しいことも一緒に乗り越えてきたんだ。

でもね、成長していくごとに
なにか違和感を感じていたんだ。

身体も声もなんとなく
ぼくだけ違うような気がした。

みんなは木の葉っぱも好んで食べていた。
ぼくは草しか食べることが出来ない。

更に成長して

みんなは角が真っ直ぐだったんだ。
でもぼくはグルグルと渦を巻きながら生えていった。

みんなはぼくのことを仲間外れにするようになっていった。

「お前は変わってる」
「だっせぇ角」
「弱そうな鳴き声だな」

ぼくは毎日小屋の隅で泣いた。

どうしてぼくだけ違うんだ!
どうして!どうして…!


ある日、その違いが何なのか明らかになった。


やぎ牧場で育ったぼくは
やきじゃなかったよ。

ぼくだけ違ったんだ。


ぼくはひつじだった。

後々わかったのだが、
僕が生まれてすぐ、やぎの小屋に誤って入れ違えられていたらしい。


雄ひつじのぼくは使い物にならないといわれた。

ずっとずっと大好きだった、
飼い主の畑沼さん…。

それからぼくはご飯の草も貰えなくなった。
草のない小屋の中に閉じ込められたんだ。

ほかのみんなのストレスになるからと、
見えないところに入れられたんだ。

いつでも真っ暗だった。
ぼくは天井からもれてくる雨水を飲み、
小屋の床穴から覗く草を少しずつ食べた。

お腹が減った。

ぼくはいらない子なの?

どうしてぼくは生まれたの?


きっとこのままお外に出られないまま
神様が迎えに来るんだね。

ぼくは泣いた。泣いたんだ。









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