第31話

番外編 4
3,573
2020/06/28 14:58



自分の撮影分が終わっていて良かった。

あの後公園のベンチに座っているあなたを見つけて、思わず抱きしめて。
ファンの子が見ているかもしれないという心配より、あなたに何もなくて良かったという安心が勝っていた。



『…。じゃあ、たこ焼きでも買って帰ろ。ほら。』

あなた「たこ焼き?」

『今の気分。ほら早く立って!』

あなた「う、うん…。」



きょとんとしてこっちを見ているあなたの手を握って、立ち上がらせる。
こういう時は熱いものを口いっぱいに頬張りたい気分だ。

近くにたこ焼き屋さんあったかな…と考えていると、













あなた「かっこいいけど、ズレてるのも、大好きだなぁ…



そんな声が聞こえてくる。
一瞬空耳かと疑ったが、あなたの表情はそんな雰囲気ではない。
俺がプチパニックになっている間も、あなたはふわっと微笑みながら見つめてくる。



『ねぇ、無自覚?』

あなた「へ?」

『さっきから全部聞こえてる。』

あなた「うそ、私声に出てた?」

『ばっちり。』

あなた「うわ。恥ずかし…。」

『こっちの方が恥ずかしいわ笑』



俺が照れてるのに気付いているかは分からないけれど、無自覚って恐ろしい…。



あなた「…ほくとっ。」

『なに。』

あなた「好きだよ。」

『……っ!』



また不意打ち…!
さすがにこれはきつい。持たない。
明らかに自分の顔が熱くなっているのが分かる。

口に手を当てて、こやつはどこでこんなのを学んだのかと考えていた。



あなた「北斗?顔赤くない?」

『別に。』

あなた「あ、熱あるんじゃない?」

『…わ!ちょ、まっ、』



急にそんなことを聞かれたかと思うと、あなたの細い腕が伸びてくる。
明らかに対象は俺の額。

今度はプチどころではなくただのパニック。
慌てる俺にあなたは微笑んで、腕を伸ばしてきた。

でもさすがに俺も、やられっぱなしではない。



『ちょ、待てって言ってんじゃん。』

あなた「へ?」



何度目かに伸びてきた腕を掴んで引っ張る。
案の定あなたは俺の体に収まって、心臓の鼓動が伝わってきた。



『好きって言われるだけじゃやだよ。』

あなた「…?」

『俺からも言いたいし。』



そしてめちゃめちゃに照れさせて、かわいい顔を眺めようじゃないか。













……そう思っていたのに。



あなた「…ふふっ笑」

『ねぇなんで笑うの。』

あなた「なんでかなぁ笑」

『おい。』



照れるどころかまたキスをしかけてしまった。
そろそろ俺の理性も持たない。

あんな、あと数cmの所でおあずけ食らって、尚もあなたはかわいい顔をする。



あー…。














まじでキスしてぇ…



そう呟いたのは、あなたには聞こえていなかったようだ。




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