第13話

12話┊もしかして
258
2021/01/11 03:45
_時透 無一郎@トキトウ ムイチロウ_
時透 無一郎トキトウ ムイチロウ
...これが、君と僕の出会い
_蒼野 心鳥@アオノ コトリ_
蒼野 心鳥アオノ コトリ
...あ、……私……

似ている。

私が探してる“あの人”と、似ている。
_時透 無一郎@トキトウ ムイチロウ_
時透 無一郎トキトウ ムイチロウ
どう?...思い出した?
_蒼野 心鳥@アオノ コトリ_
蒼野 心鳥アオノ コトリ
...いや……その

もしかしたら、霞柱様が私の…………

なんて、信じたいけど信じられない。

もどかしさが胸を痛める。
_時透 無一郎@トキトウ ムイチロウ_
時透 無一郎トキトウ ムイチロウ
まだ思い出してないみたいだし
_時透 無一郎@トキトウ ムイチロウ_
時透 無一郎トキトウ ムイチロウ
続けるね、まだ続きがあるから……

もう一度、霞柱様の優しい語りに耳を傾けた。

どこか、心が落ち着く……。


























────────


無一郎
無一郎
あなた、僕は鬼殺隊なんだ
(なまえ)
あなた
鬼殺隊……?
無一郎
無一郎
...そう、鬼を滅殺する
無一郎
無一郎
僕は兄さんが鬼に殺されて、悔しくて鬼が憎くて……
無一郎
無一郎
鬼殺隊に入りたいと思って……今、鍛錬を積んで強くなりたくて
(なまえ)
あなた
無一郎、鬼は怖くない...?
無一郎
無一郎
もう慣れた
無一郎
無一郎
...だからさ、あの……
無一郎
無一郎
あなたも、鬼殺隊に入ってお姉さんの仇を打とう?
(なまえ)
あなた
……わたしなんか...子供だし、弱いし…………無理だよ

あなたは、鬼を自分の手で殺すことを怖がっているようだった。

確かに、僕より小さい女の子が最終選別で生き残るなんて無理があるか...


なんてさっきの言葉を後悔していると、あなたが小さな声を上げた。
(なまえ)
あなた
やっぱり……わたし
無一郎
無一郎
……ん?
(なまえ)
あなた
人の役に立ちたい……。
(なまえ)
あなた
……無理、かなぁ...?

なんて自信なさげなんだろう

僕は、そんな弱い部分のあなたも可憐で美しいあなたも

全て守ってあげたいと、初めて思えた。
無一郎
無一郎
無理じゃないよ、全然
無一郎
無一郎
あなたならできる...僕が稽古をつけてあげるから
(なまえ)
あなた
ほんと……?
無一郎
無一郎
うん、僕と一緒に頑張ろう?
(なまえ)
あなた
うん...!
(なまえ)
あなた
わたし、頑張るね!

あなたの小さく細い指と指切りげんまんをした。

















それから、あなたに毎日会いに行っては素振りをして

たまに戦って、走り込みをして...

基礎練習を終えると、呼吸を教えた。
無一郎
無一郎
いい?あなた、僕が使ってるのは“霞の呼吸”
(なまえ)
あなた
うん...
無一郎
無一郎
全集中の呼吸は空気を肺に沢山送り込んで、肺を大きくして
無一郎
無一郎
骨と筋肉を熱くさせる
無一郎
無一郎
そうしたら身体能力が上がって早く動くけるようになる





だけど



何度教えても、どう教えても、あなたは霞の呼吸を体得できなかった。






無一郎
無一郎
あなた、呼吸をもう少し深く
(なまえ)
あなた
もう無理だよ、わたし弱いから……っ

あなたは、なにかに行き詰るとすぐに弱音を吐いて泣き出した。
(なまえ)
あなた
無一郎の呼吸ができないなら...鬼殺隊にはなれないよ...
無一郎
無一郎
そんなことないよ、もう1回やってみよう
(なまえ)
あなた
グス...やっぱりわたしには無理なんだよ...ッ...
無一郎
無一郎
……

もしかしたら、あなたに霞の呼吸は合ってないのかもしれない。

早く動いたり、姿を隠したり、多彩な技術を使う霞の呼吸。
無一郎
無一郎
それなら、あなただけの呼吸を創ればいい
(なまえ)
あなた
え……?

優しくて、素直に自分の感情を表現出来て

小柄で力の弱いあなたにも使いこなせる、あなただけの呼吸。
無一郎
無一郎
……────────こころ呼吸こきゅう

咄嗟にでたのは、“心の呼吸”だった。

沢山の感情を知っている、あなたにぴったりな呼吸
無一郎
無一郎
どうかな、...

霞の呼吸を継承させることは出来ないけど

あなたが全集中の呼吸を体得できるなら、そんなことはどうでもよかった。
(なまえ)
あなた
...わたし……やってみる

そう言ったあなたの瞳は見たことがないくらい力強く、頼もしかった。








(なまえ)
あなた
...全集中

もうこの時点でわかっていた

あなたは、“心の呼吸の使い手”になる、と……。













(なまえ)
あなた
心の呼吸
(なまえ)
あなた
壱の型
(なまえ)
あなた
───────欣喜雀躍キンキジャクジャク












あなたは、木の幹を斜めに目にも見えぬ速さで斬り倒した。

まるで、雀が羽ばたいていくように...。








(なまえ)
あなた
...あれ……私……
無一郎
無一郎
あなた、すごい...!
(なまえ)
あなた
できた……呼吸……“心の呼吸”……!
無一郎
無一郎
良かったね、よく頑張ったね...っ!
(なまえ)
あなた
ありがとう……無一郎、ありがとう...!
無一郎
無一郎
ううん、あなたの努力の結果だよ


あなたは、思いがけないスピードで心の呼吸を上達させていった。










そして、最終選別へと向かっていくこととなる。
無一郎
無一郎
...あなた、もう行けるんじゃないかな
(なまえ)
あなた
え?どこに?
無一郎
無一郎
……最終選別
(なまえ)
あなた
え、...と
無一郎
無一郎
行ってきなよ、あなたなら大丈夫だから
(なまえ)
あなた
そうかな……でも怖いよ
無一郎
無一郎
僕の日輪刀貸してあげる
(なまえ)
あなた
でも……

あなたならもう大丈夫なのに

まだ自信が無いのか、最終選別に行くことを嫌がる。
無一郎
無一郎
じゃあ、おまじないしてあげるから...ね?
(なまえ)
あなた
...おまじない?

僕は、少しの勇気を振り絞って

あなたの頬に口付けをした。
無一郎
無一郎
...どう?
無一郎
無一郎
自信湧いてきた?
(なまえ)
あなた
うん……
無一郎
無一郎
大丈夫だよ
無一郎
無一郎
あなたなら……きっと

そうあなたの前では強がっていたけど、本当は僕も怖かったんだ。

もうあなたに会えなくなるんじゃないか、

これでお別れになるんじゃないか、って...。
(なまえ)
あなた
...ありがと、無一郎

あなたはにっこり笑ってくれた。

僕が守りたい、大好きな笑顔で。
(なまえ)
あなた
……大好き
無一郎
無一郎
…………え?
(なまえ)
あなた
帰ってこれたら、伝えるね...わたしの気持ち









そうして、あなたは最終選別へと旅立った。


僕は、あなたの気持ちを聞くことなく















─────────“霞柱”となった。

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