夜になり、私たちは藤の花の家紋の家へ向かった。
美味しいご飯を食べて、綺麗な服を着て、ふかふかの布団で寝る。
私は、他の剣士もここに泊まったりするのかな...なんて考えて。
今夜は眠れそうにないな
鬼はさほど強くなかったから、身体はあまり疲れてないし
布団の中でゴロゴロして、ぼうっとしていたら
衣月に声をかけられた。
話って、なんだろう
────────
丸くて明るい月の下、衣月とふたり縁側に座った。
山の中だからか、星がきれいだ。
衣月、鼻が高いから横顔が綺麗。
空を見上げる衣月を見ていた。
なんで、え?
どうして衣月がそんなこと言うの?
ふわりと笑った、なんとも言えない表情。
“呼吸を解く”
それは、私の姿が見られるようになって
独りになる、ということ。
なんで、
私、死ぬよ
ふ、と消えていった
見え方は何も変わらない
だけど、衣月も八重ちゃんも霞ちゃんも居ない。
私だけひとりぼっち
大きなため息をついた。
なんかフラフラするな
息の吸い方をわすれた
いつも特殊な呼吸をしていたから
衣月はすごいな、
私の呼吸を解くことができる。
...ということは、血鬼術もを解くことができるということ。
あぁ
これからどうすればいいんだろう
とりあえず...ここを出よう
私は隊服に着替え、日輪刀を持って出た。
元から衣月はあんな感じがしてたんだよね
だって私は心の呼吸の使い手。
少しくらい、心を読むことができる。
サクサク、と落ち葉を踏む音。
それがいっそう孤独感を感じさせる。
私は結局、みんながいないと何も出来ないんだよね
あんなに夢見ていたのに、馬鹿みたい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!