____________話を、しにいこう。
高校を自主退学し、私は引っ越しして、私は今までとは違う学校生活を送っていた。
本当に、全然違うくて。
そう、いわゆる、都会。
何処もかしこも人ばかり、皆ツカツカと歩いていく。
電車は3分おき、でもどれも満員。
少し気圧されつつも、私は目的の場所へ向かう。
駅を抜けて、スマホばっかり見てる人の間を歩く。
心臓が高鳴る。
何を話そうか、いや、十分考えたはずなのに、もし頭が真っ白になったらどうしようかな……
信号を待つその時間すら落ち着かない、何せ私はただの女子高生。
目的地にいるのは、一生かかっても会えない程のお偉いさんなんだから。
人混みに埋もれそうになって、私は必死で地図を凝視する。
えーと、そこの交差点を左、それから……
この灰色のビルの中、12階……
心臓が煩くて、深呼吸する。
足も震えているし、全然落ち着かないまま、私はエレベーターのボタンを押した。
余りにも高級見た目に、余りにも場違いな自分の格好が少し恥ずかしくなった。
いくら制服でも、さすがに浮いてるよね……
どうしよう、失礼な言動はしないように、とにかく落ち着くこと、えーと、それから……
いやいや、違う。
私は私のままでいい、取り繕った敬語なんていらない、はず。
結論に辿り着き、それでも高鳴る鼓動を感じつつ、私は息を吐く。
自分の足音以外の音が無く、少し怖くなったけれど、少しずつ進む。
重い扉に手をかけ、私はドアを引いた。
__________________失礼、します。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!