あなたside
はあ。騒がしくなったな。
……午後もあそこで受けるのかぁ。
サボりたいな。
今、座っているベンチにごろんと寝転がる。ひんやりとしていて、でもポカポカの日差しでとても心地がいい。
自然と重みを増す瞼に逆らえず、そのまま寝てしまった。
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うらたぬきside
授業も終礼も終わり、下校時刻になった。
しかし、久遠さんはいつになっても戻ってこない。
明日、早く学校に来てみるか。
荷物をまとめて席を立とうとした途端、先生から声が掛かる。
……転校生は4人いる。
しかし、どう見ても先生が見ている方向にいるのは俺。
俺の机に置かれた分厚い束。
先生はそう言って手をヒラヒラさせて教室を出ていった。
べーと、まーしとセンラにやると見下したような目で見てくるあいつら。
ちっ。覚えてろよ。
クラスの女子は化粧が濃かったり香水がきつかったりする。
こういう学校なのかと疑ってしまう。
だから、なるべく関わりたくない。
この中にいじめっ子がいるかもしれないし。
しかし、探すと言ってもいらないほど広いこの学校。
ここも、ここも、ここも違う。
深いため息をつく。
窓に寄りかかってみるとそこから見える景色は今までで見たことない景色だった。
小さな公園と、住宅地の奥から西陽が差す。
坂田を手招きする。
窓を開け、ふちに体重をかける。
夕日に向かって叫ぶ。
坂田はペタンとその場に座り込み、ため息をつく。
ほんと、なんでこの学校はこんなに無駄に広いんだ。
どうしたもんかと外を見渡す。
もう、時計は6時を回っていてこの学校は5時半が最終下校時刻。
まあ、俺たちはこれ置いてからじゃなきゃ帰れないけどっ!
坂田も窓に駆け寄り、下を覗く。
覗いた先には短い栗色の髪の毛の髪の毛をした女の子が寝ている。
俺達は資料室を探すことを諦め、教室へ戻る。
もう、誰も残っていなくバッグも3つしか机の横に掛かっていない。
……ん?3つ?
俺と、坂田と、あと……誰だ?
授業に顔を出さず、終礼になっても帰ってこなかった久遠さん。
もし、あの人が久遠さんだったら聞くチャンスだ!
俺達は彼女が寝ている場所に向かって走ってった。
何度も事務の先生に怒られたけど……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。