第3話

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2018/02/04 08:51
萌香
んで?
健くんのこと、麻友のこと、全部話そう。信頼できるのは萌香しかいない。
栞菜
告った人が、麻友の彼氏だった。しかも浮気相手。最悪でしょ。
萌香
うわマジ?そこに告ったんだー。
ん?何か引っかかる言い方だな。
萌香
あれ栞菜、麻友のこと知らない?
栞菜
どういうこと?
萌香
麻友今、五股くらいしてるよ。
嘘だろ。五股?5人と同時に付き合ってるということか?
萌香
あー、知らなかったんだ。え、同じクラスってことは、森田?
栞菜
健くん。
萌香
ああ、そっちか。
そっち?ああ、2人いるのか、同じクラスに。すごいなぁ。ここまできたら尊敬するわ。
萌香
やっぱ次行こーぜ。そういうことでしょ。
そういうこと、か。けっこう好きだったけど。
あ、健くんを奪うとかは?健くん可哀想だし。そしたら誰も不幸にならずに済むかも。
萌香
栞菜?変なこと考えんなよ。
萌香には筒抜けだ。でも構わない。よし、決めた。作戦実行。




栞菜
健くん。おはよう。
あ、はよ。
普通に返してくれた。第1段階クリア。
栞菜
この前はごめんね。彼女がいるなんて知らなくて。しかも麻友だったとは。
こっちこそ。後で聞いたら、仲良いんだってな。改めてごめん。
栞菜
ううん。健くんは悪くないよ。普通に話してくれてありがとう。
謝れた。これで精算。次は、さり気なく麻友の浮気を…。
麻友、良いヤツだよな。いつも笑顔だし。そんな麻友の友達だから、良いヤツだろうなって思って。無視はできねーよ。
良いヤツなのは健くんでしょ。浮気してる麻友のこと“良いヤツ”だなんて。
これからも、麻友をよろしくな。
ダメだ、言えない。数分前の決意どこいった。こんなに不器用で優しい健くんを傷付けるなんてできない。でも、このままで良いのかな。
別に健くんに対しての恋愛感情はない。ただ、こんな良い人に辛い現実を突きつけるなんて、私にはできない。でも、麻友の浮気を知らずに、健くんは麻友を思い続けるのか。それはあまりにも無慈悲だな。
どれが正解なのか分からない。麻友を更生させるなんて無理だろう。それに今、中途半端な気持ちの私が、麻友を一途に想ってる健くんを奪うなんてこともできない。健くんに麻友のことを伝えることもできない。私は弱いな。
一つのチョコを作るのに、すごく時間がかかったのに。それだけ想いが強かったのに。何で健くんを好きじゃなくなったんだろう。人の気持ちって分からないな。好きでいたままだったら、奪うのが1番楽なのに。
そういえば、まだあのクッキー食べてないな。封も開けてない。帰ったら食べよう。そして、そこから考えよう。




ー1年後
彼氏
なぁ、チョコ頂戴。
栞菜
もちろん。はい、砂糖たっぷりにしたから。
彼氏
よっしゃ。流石栞菜。俺の好み分かってる。
栞菜
麻友から聞いてたからね。甘いの好きって。
彼氏
俺の元カノの話は無し!あいつ、浮気してたんだろ?栞菜が教えてくれなかったら…ったくよぉ。
栞菜
早いとこ別れて正解。ほら、食べて?
彼氏
いただきまーす。
あれから1年後のバレンタイン。とびきり甘いお菓子を、彼氏にあげた。私の彼氏は、1年前に麻友と付き合っていた“甘いもの好きな彼氏”
麻友が付き合っていた五股の彼氏達は、健くんを除いて、みんな別れた。
健くんと麻友は、今も付き合っている。


これは、苦くて甘いドロドロとしたチョコレートの話。

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