健くんのこと、麻友のこと、全部話そう。信頼できるのは萌香しかいない。
ん?何か引っかかる言い方だな。
嘘だろ。五股?5人と同時に付き合ってるということか?
そっち?ああ、2人いるのか、同じクラスに。すごいなぁ。ここまできたら尊敬するわ。
そういうこと、か。けっこう好きだったけど。
あ、健くんを奪うとかは?健くん可哀想だし。そしたら誰も不幸にならずに済むかも。
萌香には筒抜けだ。でも構わない。よし、決めた。作戦実行。
普通に返してくれた。第1段階クリア。
謝れた。これで精算。次は、さり気なく麻友の浮気を…。
良いヤツなのは健くんでしょ。浮気してる麻友のこと“良いヤツ”だなんて。
ダメだ、言えない。数分前の決意どこいった。こんなに不器用で優しい健くんを傷付けるなんてできない。でも、このままで良いのかな。
別に健くんに対しての恋愛感情はない。ただ、こんな良い人に辛い現実を突きつけるなんて、私にはできない。でも、麻友の浮気を知らずに、健くんは麻友を思い続けるのか。それはあまりにも無慈悲だな。
どれが正解なのか分からない。麻友を更生させるなんて無理だろう。それに今、中途半端な気持ちの私が、麻友を一途に想ってる健くんを奪うなんてこともできない。健くんに麻友のことを伝えることもできない。私は弱いな。
一つのチョコを作るのに、すごく時間がかかったのに。それだけ想いが強かったのに。何で健くんを好きじゃなくなったんだろう。人の気持ちって分からないな。好きでいたままだったら、奪うのが1番楽なのに。
そういえば、まだあのクッキー食べてないな。封も開けてない。帰ったら食べよう。そして、そこから考えよう。
ー1年後
あれから1年後のバレンタイン。とびきり甘いお菓子を、彼氏にあげた。私の彼氏は、1年前に麻友と付き合っていた“甘いもの好きな彼氏”
麻友が付き合っていた五股の彼氏達は、健くんを除いて、みんな別れた。
健くんと麻友は、今も付き合っている。
これは、苦くて甘いドロドロとしたチョコレートの話。
完
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。