北人side
あなたという女の子がグループに入ってから。
みんなどんどん仲良くなってくけど俺はどうしても無理だった。
人見知りで、女の人と話すのが苦手なのもあるけど。
なにより女の子が入れることに対して疑問しか無かった。
壱馬と翔吾が目の前であなたの話をするけど、まだ俺は追いつけてない。
きっと2人はそれを気づいててわざと目の前で話してるんだ。
…余計なお世話すぎる。
あの子の話を俺の目の前でしないでよ。
正直、HIROさんのコネで入れたんじゃないかって思っちゃう。
だって女の子一人が入れるわけないじゃん…?
そんな疑問と不満がデビューまで続いて、あなたとはほとんど話さないままデビューした。
デビューしてから、みんなさらに磨きをかけてて。
ボーカルもボイトレ三昧だった。
壱馬とRIKUさんが早足で帰ろうとしてる中、自販機の横にあるソファで寝てるあなたが見えた。
RIKUさんと壱馬は気づかず、そのまま歩いていってしまった。
その時、初めてあなたをまじまじと見た。
…こんなに細かったんだ。
…こんなに綺麗な顔立ちしてたんだ、
そう思いながら、女の子が1人てこんなとこで寝てて無防備すぎる。
うっすら目を開けたあなたにそう言うと、
あなたは静かに涙を流した。
俺の頭は思考停止。
なんでいきなり泣くんだ…?
携帯を握りしめて涙を流し続けるあなた。
それで気づいた。
ああ…追い込んでるんだなあって。
やっぱり女の子一人が男大人数のグループにいることは批判されることも多かった。
それは誰もが想像してたことだった。
でも、その分あなたは努力して認められようとしてて。
認めてくれてる人も増えてきた。
それでも、まだ自分を追い込むなんて、
確かに前は思ってた。
でも、練習が終わってもまだ残って自主練したり、
休みの日まで練習してる姿みたら、あなたがRAMPAGEに入った理由もわかった気がした。
要らないなんて思ってない、邪魔なんて思ってない。
むしろ…メンバーが笑えてるのはあなたのおかげなんだと思う、
あなたの目を見て言えば、どんどん溜まってく涙。
…まだ泣くの?
そう思いながら、あなたの涙を拭いてあげれば、また泣き出して。
たくさん、溜めてたんだな、
そう言ってやましょーさんがあなたの背中を摩りながら、部屋に入っていった。
俺の態度も、あなたを追い詰めてたのかもしれない。
そう思えば、なんとなく常に難しい顔をしてた理由がわかる。
…あの小さな体で、溜め込んで追い込んで、
いつか壊れちゃいそうだった、今にも消えちゃいそうだった。
壱馬やみんなが過保護になる理由がわかった。
部屋に入れば、目を赤くしてありがとうごめんねと言って笑うあなたがいて。
俺こそごめんしか言えなかったけど、これからたくさん返していこうと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。