前の話
一覧へ
愛菜(マナ)は○○高校の2年生。実は色々な事情があって、一人暮らしをしている。新学期が始まり、高校生活にもすっかり慣れてきた。
そんなある日の放課後のことだった──
「うわぁ雨降ってんじゃん…」
愛菜の友達の友香(トモカ)が呟いた。
友香は愛菜の小学校からの幼馴染で同じクラスだ。
「ほんとだ。私傘持ってないのに…」
「だよね、私もだ。これじゃあ家に着く頃にはびしょびしょになっちゃうね。」
2人とも傘を持っていなく、学校の玄関で憂鬱になっていた。すると隣のクラスの下駄箱に一人の男子生徒が現れた。
「あ!みちくんだ!!」
友香が嬉しそうに声を上げた。みちくんとは隣のクラスの道也(ミチヤ)のことで、友香の彼氏である。
「あ、友香じゃん!それに愛菜ちゃんも!」
彼はサッカー部でとても爽やかなキャラで周り
のみんなにも好かれている。
「急に雨降り出したよな。友香、俺の傘入ってく?」
道也は友香に話しかけた。
「うん、気持ちは嬉しいけど愛菜がいるから…」
「え!!私はいいよ!道也くん、友香の事お願いね!」
友香と道也は申し訳なさそうな顔で帰って行った。2人ともすごく優しい性格だからみんなに好かれるんだなと、改めて実感した。
あれから20分ぐらい経った。雨は一向に止む気配は無い。愛菜は仕方なく濡れて帰ることにした。
上から降ってくる雨もそうだが、水溜りを踏むたびに跳ね返ってくる水がとても冷たかった。
走り疲れた愛菜は走るのを辞め、歩き始めた。ここから家までは徒歩3分。雨も小降りになり始めた。
「よかった、これで少しはマシかな。」
歩いていると、「ミャーミャー」と声が聞こえた。とてもか弱い声だ。
周りを見渡すと、道の隅にダンボールに入った子猫がいた。
「えっ…もしかして捨て猫?」
ダンボールには【拾ってください】とシンプルに書かれてあった。家はアパートだか小動物1匹を飼うのは認められていたので、連れて帰ることにした。
「こんなに小さいのに、可哀想…今すぐに帰って温めてあげるからね!」
そう子猫に話しかけて、愛菜は再び走り出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!