第20話

moon
253
2021/08/07 10:16
雨音side




「……床に布団敷いて寝る…?」
心配そうに岩本さんが私の顔を見る

「雨音ちゃんが寝やすいように寝たらいい」と舘さんが頷く






そもそも実家にいた時も布団をベッドの下に敷いたりして寝てたわけではない


小さく首を振って
「ベッドで寝ます」と答えた

あ、敬語になってしまった…




クスッと笑った岩本さんが
「了解、それじゃまた明日ね」
と手をヒラヒラさせながら
「寝るぞー」とみんなに声をかけ私の部屋から押し出す




みんなからのおやすみを聞いて部屋に1人になり
ベッドに腰掛けて小さくため息をついた

そのまま仰向けに倒れるように横になり目を瞑る




フカフカのベッド
いつも硬い床の上だったからなんだか肌にあたるシーツや布団の感触がくすぐったい





目を瞑ってその時を待ってもやっぱり眠れなくて


どれくらい時間が経ったのか時計がないからわからず

とりあえずリビングに降りてお水をもらおうと部屋を出た





リビングの時計をチラリと確認すると深夜1時

結構時間経ってたんだな…


そんな事を思いながらコップを手に取り冷蔵庫を開ける


勝手にコップとか使っていいのかな

ふと握りしめたコップを見て買い出しに行く時に自分のコップも買おうと思った





リビングに移動すると月明かりで少し明るい


庭に続くフレンチウインドウを開ける



今日は満月だ



庭に降りて椅子に腰掛ける




庭は綺麗に手入れされていて色とりどりの花が飾られている


「あ…」
ふと微かに匂う甘い香りに椅子から立ち上がり匂いの跡を辿る


「金木犀…」
綺麗に咲き乱れている金木犀

私は金木犀が大好きだった


お父さんの優しい笑顔を思い出す


胸を締め付けられる

何度お父さんのそばにいきたいと思ったかわからない





踵を返して金木犀から距離を取り椅子にまた腰掛けて月を眺めていた












「あれ…雨音ちゃん?」






呼ばれて振り返るとフレンチウインドウのそばに1人の男の人が立っていた


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