第15話

Memory
291
2021/08/02 00:01
雨音side



いつからだろう

お母さんが私の部屋に来なくなったのは





いつからだろう

お母さんが私と目を合わさなくなったのは





いつからだろう

助けを求めるのをやめてしまったのは











階段を上ってくる音がする

身体が小さく震え始める





今日はどっち……


お義父さんでもお義兄ちゃんでも…

どっちでも同じこと




身体に力が入る





部屋の扉が開く



ベッドの下に逃げても意味がない
結局は引きずり出される


それでも抵抗しないよりは……






誰かがこっちを覗いてる…



伸びてくる手


顔が笑ってるように見える




怖い怖い怖い怖い
やっぱり怖い





やめて!
もーやめて!







助けはこない





ー雨音これ見せたらお義母さんどんな顔するかなぁ?



ー雨音はいい子だねこれはお義父さんと雨音の2人だけの秘密だよ



ー綺麗な背中見てると傷をつけたくなるよな



ーあいつもお前を抱いているのか?俺だけの雨音じゃなかったのか?このアバズレが!!









いつからだろう
お母さんが気付いてたのは





いつからだろう
お母さんが泣いてすがるようになったのは


ー雨音お義父さん達は悪い人じゃないの。雨音が居なくなったら今度は私がお義父さん達に…







何度も何度も受けた仕打ち



それでも怖いのは変わらない




やめてやめてやめてやめて

もーこれ以上私を壊さないで






咄嗟に手が出る


「照!」




聞き慣れない声にハッと我に返る






目の前には頬を押さえている悲しい顔







あたしは一体何をしたの……?



訳がわからず後ろに這いずるように逃げて自分の身体を抱きしめる


体の震えが治まらない




そうだ
ここはあの家じゃない



お義父さんもお義兄ちゃんもいない



知らない人を傷つけてしまった








呆然としている男の人を別の男の人が支えて立ち上がらせる



「雨音ちゃ「出て行って…お願い…」
間髪入れずにそう呟いた




他の人も部屋を出て行こうとする
「ごめんね」と声をかけられたけど何も言えなかった





謝らないといけないのは私の方なのに…

膝を抱えてうずくまる


まだ1人誰かいたみたいだけど顔を上げる勇気がない



こんな私を見ないでほしい

しばらくしてからドアが閉まる音がした






あの悪魔達の住処から逃れても私は捕らえられたままだ





朝からここの人達が私に何度もドア越しに声をかけてくれていたのは気づいていた



でも怖かった
何も知らないあの人達の笑顔が
幸せに暮らしてきたんだろう眩しい笑顔が




私とは違う
きっと住む場所が違う
私はあんな風に笑えない






ー彼らはねメンバー同士すごく仲がいいんだよ
辛い時も苦しい時もお互い支え合ってきたから今の彼らがいるんだ
信頼し合って、歳は違えど本当の家族みたいなんだ



雨音が人を信じるように、また笑えるようになる為にも彼らを信じてみて欲しい

きっと彼らは雨音の家族になってくれるー



ここへ来る車の中で滝沢さんが話してた


誰も私達家族を探してもいなかったのに滝沢さんだけは違った



助けを求める事を諦めていた私に悪魔の住処から連れ出してくれた滝沢さん










信じてみたい


怖い





だけど







このままここにいても何も解決しない



怒られてもちゃんと謝らなきゃ





大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる


顔をあげて部屋の扉を開けリビングに静かに降りて行く



リビングの前で立ち止まると中から小さな声がわずかに聞こえる







怒られて
ここに居れなくなったら…



一瞬の不安





頭を振り深呼吸を小さくしてから前を見てリビングの扉を開けた


























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