第6話

past
325
2021/07/29 01:06
目黒side


しばらくしてから阿部ちゃんがリビングに戻って来た


すぐさま佐久間くんに何か耳打ちをして「後で持ってってあげて」と伝えていた

きっと着替えの服の事だろう



「俺のアヒル使うかな…」横でしょっぴーが何か言ってるが無視した

てゆーか俺が入った後のお風呂で良かったんだろうか…
ちゃんと片付けたっけ…



「滝沢くん何があったんですか?」ジッと滝沢くんの様子を伺っていた岩本君が声をかけた




みんなの顔を見た後目を少し伏せて滝沢くんがポツリポツリ話し始めた



「全部は話せない…あの子が傷付くかもしれないから……あの子は…雨音は昔はすごくよく笑う子だったんだ。親戚同士で集まれば俺を見つけたらすぐに笑顔で駆け寄ってきてくれるそんな子だった。雨音が中学生になってすぐの頃、雨音のお父さんが亡くなったんだ。お葬式で見かけた時は泣き崩れるおばさんの横で涙を堪えておばさんを支えてる姿が印象的だった。お葬式が終わった後雨音のそばに行った時、私がお母さんを支えなきゃって涙を浮かべながら笑ってたんだ。

…その辺りから俺も忙しくなってしまって親戚の集まりや雨音と連絡取る事がなくなってしまって…しばらくしてから俺の母親から雨音のお母さんが再婚した事を聞いたんだ。連れ子同士の再婚だったらしいけど…
俺は暇を見つけて雨音に連絡したんだ。
そしたら、私にお兄ちゃんができるの。お母さんも幸せそうで良かったって嬉しそうに話してたんだ。
そこからなんだ。
俺達にも親戚にも誰にも言わずに雨音達家族と連絡がつかず家も引っ越したみたいで誰も居場所がわからなくなってしまったんだ。

仕事をしながら俺も探偵を雇ったり近所の人達に聞き込みしたりしたんだけど、なかなか見つけられなかった。
見つけたのがつい最近、すぐに会いに行ったよ。
いなくなった理由を知りたかった。
だけど雨音も、おばさんもすっかり変わってしまってたんだ…俺が知ってる雨音はどこにもいなかった」


フゥとため息をつく滝沢くん

舘様が入れてくれたお茶はすっかり冷めてしまっている


ふと時計を見ると雨音ちゃんがバスルームに入ってから時間が経っている



佐久間くんをチラリと見やるとバスルームと滝沢くんを交互に見ていた

「佐久間くん、阿部ちゃんに服頼まれたんじゃないの?バスルームにそろそろ持って行ってあげた方が」

俺が言い終わる前にガタッと立ち上がって意を決したように
「そうなの!ありがとめめ!!」と言いながら走り去って行った。



「え…佐久間の服で大丈夫なの…?」ふっかさんの声




その質問にみんな黙ってしまう


佐久間くんの服…アニメばっかだからなぁ……




「まぁでも…1番サイズがさ…ほら…ね?佐久間もわかってるはずだよ。普通の服もあるだろうし…」

自分が提案した事にも関わらず段々と声に覇気がなくなっていく阿部ちゃん。






リビングにいるみんなが不安に思っていた













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