第5話

soap
347
2021/07/28 02:34
雨音side



知らない男の人に案内されて一定の距離を保ちながらバスルームまで着いて行く


チラチラと視線は感じるもののバスタオルのおかげで目を合わすこともない



バスルームに着くとシャワーの使い方、ボディーソープやシャンプーがどれか細かく教えてくれる



「ゆっくり入っていいからね」そんな声が聞こえてきたけど返事はしなかった



男の人が出て行きしばらく耳を澄ます

こちらに向かってくる音などしないか待ってみたけど何も聞こえない


ため息を1つついて服を脱ぎバスルームに入るとシャワーの蛇口を捻った
しばらくすると温かいお湯が出始め冷えきっていた身体がじんわりと温かくなっていく


頭からシャワーにあたりながらふと足下を見た
裸足で出てきたせいで足の汚れがシャワーと一緒に流れて行く









全部流れてしまえばいいのに















一通り洗い終わってバスタブに身体を沈めた

入浴剤が入っているのかな…いい匂いがする

ふとバスタブの縁に目をやるとアヒルが大中小並んでいる


これ、あの人達が??
……まさかね…






今頃滝沢さんとあの人達はなんの話しをしているんだろう
もしかしたら全部話されているかもしれない



バスルームから出るのが怖い
あの人達の目を見るのが怖い

広いバスタブに自分の身体を守るように足を抱え込んで俯く




「おいで!雨音!!」
ふと滝沢さんに呼ばれて飛び出した時の事を思い出して顔をあげる


滝沢さんはあの時何を思っていたのだろう
驚いたようなそれでいて少し困ったような
そんな顔だった





ガタッ


急な音にビックリして反射的に音がした方を向く



「あのっ…雨音ちゃん?服なんだけど…サイズ的に俺の服が1番小さいからって俺の服になっちゃったんだけど…どれがいいかわかんなくてっ!とにかく置いておくから!!ごめんね?!」


そう言ってバタバタと脱衣場から出ていく音がした




そっと脱衣場を覗くと誰もいなくて
バスタオルの上にTシャツとハーフパンツが置かれていた



Tシャツを手に取って広げてみる
確かに男の人のサイズにすれば少し小さいかもしれないけど、それでも私よりは大きい


Tシャツに書かれているプリントと文字を見て
「ウソでしょ…」
と言葉が漏れた











Tシャツにはやる気ビームと書かれていた









プリ小説オーディオドラマ