第82話
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あなたSide
何?これ。
俺なの?じゃあこれは夢?
小さいときの俺と兄貴だ。
こんなことあったっけ?
そのまま兄貴は走っていった。
なにこれ。俺に何がさせたいの?こんな夢見せて。
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ななもり。Side
さっきっからあなたくんがうなされてる……
体を揺さぶっても起きないし、なぜか涙が出てる。
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あなたSide
誰かが俺の名前を呼んでる。
兄貴じゃない。優しい。包み込んでくれる優しさ。
安心する声。
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ななもり。Side
あなたくんは自分の右手を自分の頬へと持っていって肌に触れた。
そして涙がついた手を見ながら悲しそうに笑った。
話している間にも、まだ涙はこぼれ続けていた。
本当に。突然泣き出して、いつものように楽しげに笑っているあなたくんはどこにもいなくて、今はその面影さえない。
そう言うとあなたくんは手で顔を覆って泣き始めた。
確かにもうメンバーに隠し事はしていない。
喘息の症状も治まっている。
それが、怖いんだよね。
いつもあったものが無くなる。
例えそれが自分にとって嫌なものであっても不安になる。
あなたくんにとって、俺の言葉では言い切れないくらいの不安がのしかかっていたのだろう。
背中を、肩を震わせながら泣きじゃくるあなたくんはとても幼く見える。
もうあなたくんが泣きませんように。
苦しみませんように。
そう願いながら俺とあなたくんは片手の小指を絡めて2回上下に手を振った。
あなたくんの目からはもう涙は出ていなかった。
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ちょっとしんみりとしたお話でしたね。
約束。大きな約束ほど、ちゃんと守らなければいけませんね。
大切な人との約束を。
バイバイ