「_______________?」
胸騒ぎがして振り返って付近を見た。
然し周りは路地裏ということ以外普通である。
「如何かしたンすか?」
急に立ち止まった私に、隣を歩いていた立原が
不思議そうに尋ねてくる。
「ううん、何でもない」
「そーすか。」
「早く用事済ませて戻りましょう」
「・・・俺等の用事じゃねェけど。」
そう。立原の言う通り私達の用事では無い。
内容は梶井の使う檸檬を買って来いというものだ。
其れなら他の部下に頼めばいいだろうと思ったのだが私達に言うや否や研究室に閉じこもってしまった。顔を見合わせた私と立原だがお互い今日は非番で特に用事も無い。だから、仕方無く。
「組織の為だし、大目に見ましょうよ」
「・・・ウッス。」
腑に落ちない様で返事には間があった。
あ、そうだ。
「用事済ませたら何かしてもらいましょう?」
「!イイッスね✨」
途端に立原の表情がパァっと明るくなった。
うむ、我ながら見事な提案。
「でしょ?」と思わず私も綻んでしまう。
「俺!飲みに連れて行かせる」
「じゃあ、わた・・・」
_______________異能力「”朝の鏡”」
”朝の鏡”という異能を知っていたから聞こえた瞬間
心は恐怖心が支配し、私は昔の癖で横へと避けた。
すぐ後に聞こえる苦しそうな声と血飛沫。
「ア”ア”ァ”」
見れば刃物の刺す部分だけが地面から生えるように二本突き出ていた。其れが立原の身体に容赦無く刺さっている。
「立原!」
「彼は立原と云うんだね。」
「!」
角から出て来た男がそう言った。
私は此奴を知っている。
此奴は・・・
「久しいね。羽那」
目の前にはポートマフィアの手柄を横取りした、
私の姉を殺した、憎たらしい父親がいた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。