「はーなッ」
呼ばれたと同時に私の座って居る二人用のソファがギシッと軋んだ。座った人物は如何にもチャラそうな男性。
「羽那って誰のコト?人違いじゃない?」
内心名前を知られている事に驚いたがすっとぼけて見せた。之も仕事柄身に付けたものである。
「またまた。彼奴から聴いたから知ってんだ」
顎で指した人物は中島敦。・・・情報流さないでよ。
「はぁ・・・」
「溜息なんてしてたら綺麗な顔が台無しだぞ?」
「其れはどーも。」
「俺LINE交換したい」
「私はしたくない。」
「ならデェト」
「お断りよ。」
「キッパリ断るタイプ?いいね頑張りたくなる」
何だ此奴( '-' )
此の自信過剰な男に目眩を覚えながらあからさまに嫌そうな顔で「幾ら頑張っても無駄。」と言った。
そのままソファから立ち上がる。
勿論此の男から離れる為だ。
だが男の一言が私の行動を止めた。
「はー、やっと見つけたのになーーー」
「・・・・・・・・・探したってこと?」
此の質問をした瞬間、
男の表情が、
目が、
口元が、
これ以上にない程に歪んだ。
まるで其の質問を今まで待っていたかの様。
だが、質問に答えず「全員こっち向いてーーーー」と視線を自分に浴びさせた。
呼び掛けに無意識に振り返る武装探偵社の社員達。
視線が集まったのを確認した男は歪んだ笑顔の
まま告げた言葉。
「異能力、”思い出”」
_______________拙い
思ったが時すでに遅し。
直ぐに視界がぼやけた。
同時に身体の力が一気に無くなる。
意識を失う前に聞こえた言葉。
其れは行動とは対照的なもので理由を尋ねたい
衝動に駆られる。
だが願いは叶わず、間も無く私は意識を失った。
_______________確かに聞こえた。
「・・・ごめん」という謝罪の言葉が。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。