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第11話

服従
「太宰」
ある昼下がり。
厭な予感のせいでやる気の出ていない私の名を社長が呼んだ。無視してしまいたい”任務”を之から言われる事は目に見えていて、憂鬱になりながらも渋々顔を上げる。
「・・・何ですか」
「分かっているな。」
「勿論ですよ」
だから憂鬱なんです、と心で呟く。
今夜中也とタッグを組んで戦うだろう。
恐らく・・・否、絶対。
嫌だなぁと思いながらもう一度バナナを皮ごと噛んでみる。うん、矢張り美味しくないな。
「だからバナナの皮くらい剥け!」
国木田君が私に怒鳴る。
五月蝿いなぁ、と思いながら国木田君を見上げた際、其のクリーム色のスーツが妙に気にかかった。
あれ・・・??
「・・・如何した?」
「否、何でも無い」
そう答えた時には思い出していた。
この色と同じ髪色をした見知らぬ女性を見たな・・・きっとあれが噂の中也の弟子だろう。
通称『第二の太宰治』。
まぁ中々顔立ちも良かったし、第二の私と言われる位なのだから余程万能に違い無い。
よし、一度彼女と話をしてどれ程の人材か私が見定め様じゃないか。
スッとソファから起き上がり社長を見る。
「社長」
「何だ」
「今夜の作戦に呼びたい人物が一人。」
「ほぅ、誰だ」
はて、誰だろうか。
「・・・小さなマフィアの弟子です」
私は笑って誤魔化した。
分かることは其れ位だから仕方が無い。
「一応、鴎外殿に伝えておこう」
瞳を閉じて社長が仰った。
「有難う御座います」
私は礼を言って国木田君にバナナを渡し頼んだ。
「面倒くさいから剥いて?」
「餓死して仕舞え!!」






















「はァァァ・・・」
中也さんが思い切り溜息を吐く。
溜息は月明かりに照らされた林へと消えた。
「何で俺らなんだよォ」
「元相棒だからでは?」
「・・・はァァァー」
また、大きな溜息。
まぁ、無理もないだろう。
之から自身が大嫌いな人と協力して任務をするのだから溜息が出るのも当然だ。
然し・・・
「何故私も?」
私には分からなかった。
”双黒”と呼ばれ恐れられた二人に同行して欲しいと言われた意味が。中也さんに尋ねたが首を横に振り、知らない事を示される。
「そうですか。」
「どうせ碌でもねェこと思い付いたんだろ」
「成程。」
つまり、其の碌でもないことに巻き込まれるのか。
”太宰治”さんの嫌がらせを以前聞いた事がある。
ある時はワインのコルクを全て抜き
またある時は車に爆弾を仕掛けたそうだ。
何と恐ろしい。
後者に至っては下手をすると命が危ないとも思うが、其れはまだ序の口だと言う中也さんも中々恐ろしいものだった。
「まァ、嫌がらせに気を付けろよ」
「任務よりもですか?」
「当たりめェだ。
双黒が揃えば敵なんざ塵だからなァ?」

黒い笑みで、然して何処か誇らしげに言った。
何故この人は裏切られても尚、彼を信じるのか。
何故命を落とす可能性が有る嫌がらせを受けても
彼を許して仕舞えるのか。
理由は簡単だ。
此の五代幹部は優し過ぎるのだ。
だから傷付けられても許してしまう。
立原から聞いた。
私がQの異能により暴走した際単独で私を殺そうとした部下を止め、私に刺されても尚、私を心配する様な・・・言って仕舞えば人情深過ぎてマフィアらしく無い人なのだ。






――――数百メートル先が眩しくなった。


「行くぞ。始まったみてェだ」
「了解。」







先に歩き出す彼の背を見て改めて心に決めた。


















――――この人の為なら何でもしようと。――――